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ECzine Day 2024 Autumn

2024年8月27日(火)10:00~19:15

マイクロソフト×パートナー対談「未来のEC」を語る(AD)

[対談]デジタルデバイドが進む小売業界 オークファンが目指す「ロジカルなEC」とは

価格調整を自動化して、コンバージョンの先の利益を考えよう

得上(オークファン) 米大手EC事業者は、自社の商品の価格を最適化するためにモール事業をやっているという話もあったりしますよね。ほかの小売事業者に場所を貸してしまうと、どうしても売上は下がるんだけれども、それでも、価格の最適化をしたいと考えている。価格の最適化はそれくらい、小売業者には大事なことなんですが、その「大事」の度合いが、海外と日本では違いがあると思っています。海外では、「プライス・オプティマイゼーション」という市場がありまして、大手ITベンダーが次々とツールを出してきていますから。

プライス・オプティマイゼーション分野の日本の遅れは、「最適な価格」ではなく、「最安値」で提供するという市場になってしまっているのが原因かもしれない。最安値に設定すると売れるには売れるのでしょうが、それで儲かるかというと疑問です。根本から商売の考えかたを変えない限り、今後、EC業界はますます厳しくなっていくでしょう。

増渕(日本マイクロソフト) 価格を最適化しようとすると、その途中経過で、物流コストや、配送の段ボールのサイズなんかも、最適化しようという発想になるでしょうから、全体の経営最適化のはじめの一歩になるかもしれませんね。以前、得上さんと話したことがあるのですが、今の時代、システムは作りっぱなしではダメで、継続デリバリーで、改変し続けなければいけない。同様に、商品の価格も、よりよいものに改変し続けていってほしいですね。

日本マイクロソフト株式会社 デベロッパーエバンジェリズム統括本部 エバンジェリスト 増渕大輔さん

得上 継続デリバリーの発想だと、今行われているのは、発売時をピークに、値段を下げ続けていくということ。上がることって、あまりないですよね。そうではなくて、市場の相場にあわせて上げたり下げたりしないといけない。ただ下げ続けるとか、同じ値段で売り続けるのはナンセンス。以前はそれが難しかったのですが、今はできない時代ではない。

増渕 それでも、既存のマーケティングツールや分析ツールだと、難しいんじゃないですか。

得上 ほとんどのツールが、コンバージョンまでしか見られないですからね。そうではなくて、コンバージョンがなされるのを前提に、価格を調整して、利益を最大化するという発想を持つべきなんです。マーケティングで終わりでなく、経営としてはそこまで持っていかないと。

増渕 たぶん発想としては当たり前のことなんですけど、EC担当者、CMOといった役割を超えて、いろいろなところに波及するので難しいんでしょうね。「経営視点で利益を最大化」なんて言っても、現場に嫌がられるだけかもしれない。

得上 現場としては、とにかくモノを売れと言われていて、全体利益を踏まえた価格の最適化というところまでは、意識が及ばないのが実態でしょう。

増渕 とはいえ、「aucfan.com」のユーザーであるプロシューマーたちは、はじめからその考えが遺伝子に入っているわけですよね。できていないのは、大企業だったり、既存のECツールベンダーだったり。そこをうまく突破しようとしているような事例は、出てきていますか?

得上 売値を調整することで利益を決めようという考えかたはあると思うんですが、仕入れ値を調整しようという考えまでは、出てきていないんじゃないでしょうか。粗利は、仕入れ値と売値で決まりますから、仕入れ値をコントロールしようという発想も必要です。

増渕 日本ではまだ、そこまで一気通貫で見られるEC担当者、CMOは少ないと思うのですが、それをテクノロジーで手助けすることに、オークファンさんは取り組んでいらっしゃるわけですよね。

得上 過去の取引のデータも重要なのですが、今、まさに相場がどうなっているかも知る必要があり、インターネット上から相場に関するデータをクローリングしているわけです。それを使うのには二段階のステップがあって、まずは集めてきたデータをとりあえず溜め込みます。直接データベースに溜め込もうとすると、すぐにパンパンになってしまうのですが、クラウドが解決してくれます。Microsoft Azureには、溜め込んでおく「Data Lake」が控えているのもいいですね。

次に、その溜め込んだデータを使いたい分だけ出してきて、分析します。この二段構えに、数億円くらいかかっていたのですが、今はそれがティアード化してきました。ひとつ機械学習のモデルを作るのに、数十円という世界になってきています。

それは大きなチャンスで、Eコマースを始めた段階から、データドリブンな価格戦略ができる、マーケティング施策を打っていけるわけです。オークファンでは、広く使っていただけるよう、なるべく素早くデリバリーしていきたいと思っているのですが、海外ではすでにスタートアップ企業がいくつも出てきていますので、それを引っ張ってくるのもアリかもしれません。

一方で、ほかにサービスが出てこないので、もしかして日本では受け入れられないサービスなのかもしれないと、危惧してもいます。その代わりに、おもてなしをしようとか。悪いことではないのですが、それはリアル店舗に任せておけばよくて、やはりEコマースはEコマースの良さを活かした戦いかたをするべきでしょう。

増渕 おもてなしそのものも、海外のZapposといったECのほうが優れているかもしれません。あそこまでのおもてなしができている日本のECって、なかなかないですよね。

得上 そもそもの「おもてなし」の意味を、もう一度考え直す必要があるのかもしれませんね。心がほっこりして、結果コンバージョンが増えるかもしれないけれど、1つひとつのコンバージョンの利益について、もっと考えるべきなんです。そして、価格を最適化するといった実作業は自動化して、人間は誰もやらないというのが理想だと思います。そこまで徹底してはじめて、人間がおもてなしに時間を使うとか。

増渕 部門に壁を作ると、価格調整の役割は誰がやるんだという、責任論になっちゃうんですよね。それだとよろしくなくて、マーケティングもITもわかる人が、ツールや外部のベンダーを利用して自動化すればいい。そのためには、担当分野を超えた超党派が出てくるべきなのかなと思います。

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この記事の著者

ワダ スミエ(ワダ スミエ)

2013年11月11日〜2023年3月31日までECzine編集部在籍。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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https://eczine.jp/article/detail/2221 2020/06/16 15:00

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