一点もののアンティーク商品、在庫連携システムで効率化
越境ECとひとくちに言っても、そのショップによって、売れる国も商品もさまざまだ。「宗(sou) 」の場合は、フランス、スペイン、イタリア等のヨーロッパからのユーザーが多く、売れ筋商品は「着物」。それを包む「たとう紙」がめずらしく、それだけ何枚も欲しいという声が寄せられるというから、そのあたりは海外販売ならではのおもしろさだ。
アンティークの茶道具・着物を扱うとあって、ほとんどの商品が一点ものであるため、自社のシステムで海外、国内サイト問わず、自社専用のシステムで在庫の一元管理を行っている。
「eBayである商品が売れたら、国内のショップでも海外のサイトでも、自動的に売り切れになるということです。そのマスターデータの商品情報を翻訳して、eBayならeBay用に、CSVでアップロードしています。当初は、それほど商品点数も多くなかったので、僕が翻訳しながらサイトを作るというような進めかただったのですが、今では社内に翻訳専門のチームがあり、商品情報の翻訳は彼らに任せています」
効率化、仕組み化が功を奏し、eBayに出店している店舗の中でも多いと言う、3万5,000点もの出品につながっている。出品数が増えるほど、売上も上がっていくのは、ご存じのとおり。
今後、伸ばしていきたいと考えているのは、中国だそう。
「アジア、とくに中国では、木版画などの芸術品が売れています。常連客の中には、1回に20点以上購入してくださる方もいて、大学教授の方が、講義で学生さんに見せるといった使い道もあるようです。もちろん、うちのサイトを卸のように使われて、現地で販売する方もいらっしゃると思います」
集客はGoogle リアルな場でeBayユーザーと出会うことも
越境ECでは現状、新規獲得が目下の課題だというショップも少なくないだろう。リピート率が高い「宗(sou)」でも、当然ながら、新規獲得には知恵を絞っている。
「集客の施策は、基本的に広告です。Googleの検索連動型広告がメインで、補助的に、日本に関するブログ宛に『取り上げてもらえないか』というメールを送ったりしています。FacebookやInstagramなどソーシャルメディアは、商品画像を中心に、英語と中国語で、手動で投稿しています。中国だけは特殊で、そういった施策が打てないので、現地で一般的に見られている広告サイトに出す準備をしているところです」
「宗(sou)」のFacebookページには、各国からファンが集まり、10万いいね!を超えているが、売上に貢献しているかというと、なかなか難しいと言う。eBayの広告ツールのうち、まだ未使用のものがいくつかあるので、今後は積極的に活用していく考えだ。
ECだからといって、オンラインでの集客にこだわらず、海外のイベントにも積極的に参加している。
「7月に開催された『JAPAN EXPO』に出店してきました。ブースで展示販売をしたのですが、eBayのお客様もいらっしゃいましたね。『ケビンですか?』と聞かれたりして、名前を覚えていてくださるのもうれしかったです。僕らも、eBayのIDや本名を言っていただければ、『あのお客様か』とわかりますから。やっと出会えたというか、不思議な感覚でしたね。
お客様と直接お話しして、『こういう商品が好きです』といったお声を聞いて、ノウハウみたいなものを直接仕入れることは、パソコン越しのECだけではできないことです。イベントに実際に出店することで、可能性が広がっていきますから、今後も積極的に、さまざまな国に出て行ったり、実店舗も作れたらとは思いますね」