UXの壁を突破する「ネイティブ化」と「パーソナライズ」の技術
スタッフの熱量を届ける土台として、アプリの「使いやすさ(UX)」は欠かせない要素だ。どんなに良いコンテンツがあっても、表示が遅ければユーザーは離脱してしまう。両社が導入しているアプリプラットフォーム「MGRe(メグリ)」は、ノーコードの利便性と、外部ツールとの柔軟なAPI連携による個別開発を両立させている。
アガットが直面していた課題は、WebViewベースの画面表示によるストレスだった。特に商品一覧画面の表示速度に対する不満がアンケートでも顕在化していたという。そこで同社は、商品検索エンジン「awoo(アウー)」のAPIをMGReと連携させ、商品一覧の描画をアプリネイティブ化した。
「ウェブに依存していたアイテムページをネイティブ化することで、恐ろしいほどサクサク商品が見えるようになりました」とメグリの鯨岡氏は語る。この改善により、アイテム画面の表示回数は189%に増加し、カートイン率は115%UP、購入件数は123%UPという劇的なビジネス成果に直結した。UXの改善がそのまま売上に反映された好例だ。
さらにアガットは、ビジュアルマーケティングツール「visumo(ビジュモ)」を連携し、店舗スタッフによるスタイリング投稿機能をアプリ内でネイティブ化した。以前はブランディングの観点から本部スタッフの投稿に限定していたが、ユーザーからの「店舗スタッフのリアルな着こなしが見たい」という要望に応えた形だ。実装後はスタイリングの閲覧数が大幅に増加し、店舗スタッフの投稿モチベーションも向上している。
もう一つの先進的な事例が、Brazeの位置情報を活用した「ジオフェンス施策」だ。特定の店舗から一定の半径内にいるユーザーに、10%OFFなどの優待情報をリアルタイムでプッシュ通知する。 飯塚氏によれば、「都心部よりも地方の郊外エリアの方が、来店戻り率が最大30%を超えるなど、高い実績に結びつきました」という。上田氏もこの結果を受け、「情報が溢れる都心よりも、生活圏に近い郊外の方が良い反応というのは示唆に富んでいる。自社の店舗網に合わせた戦略の参考になる」と評価した。

また、両社は「コンテンツカード」機能も活用している。これはアプリ内のインボックス(お知らせ一覧)に、ユーザーの属性や閲覧履歴に基づいたパーソナライズ情報を表示するものだ。プッシュ通知は見逃されることもあるが、コンテンツカードであればユーザーがアプリを開いた際に確実に情報を届けることができる。
トゥモローランドでは、バースデークーポンやポイント有効期限、カート落ちの情報発信にプッシュ通知に加えて同機能を活用。すべてメール配信と比べて高い成果が得られており、バースデークーポン配信ではEC購入件数が273%、カート落ち配信ではEC購入率が152%と購買に大きく寄与している。


