AI検索は初見のブランドでも選ばれやすい? キーワード検索との差を紐解く
2025年のBFCM直前にコマース業界を賑わせたニュースの一つが、ChatGPTの「ショッピングアシスタント」機能リリースだ。馬場氏も「『AIの民主化』からさらに一歩先の『AIの民衆化』を進めた」と認めるChatGPTにこうした機能が実装されることで、今後さらにコマースとAIの距離は縮まるに違いない。
「Shopifyが集計した2025年1月と10月のデータを比べても、AI検索経由のトラフィックは6倍に、購入に至った注文数は10倍にまで増加しています。AI市場の成長率や、ChatGPTのユーザー数の推移を見ても、AIを通じて検索やショッピングをする動きは今後さらに加速していくでしょう。
また、AI検索と従来型チャネル経由の注文との間の明確な違いとして『平均注文額の高さ』が挙げられます。実際、Shopifyのデータでも平均注文額は30%高く出ているほか、新規顧客獲得も2倍となっています」
この結果は、キーワード検索とAI検索の決定的な違いを示している。「言語化できるもの」しか探せないキーワード検索に対し、AI検索は会話を通じて消費者の曖昧なニーズを捉えることで、高精度なマッチングを可能にする。会話の文脈を汲んだ提案は初見のブランドでも選ばれやすく、単なる価格競争に陥りにくいのが大きな利点だ。
AIから選ばれる土俵に上がるには? 事業者が取り組むべき四つのAIO施策
漠然とした悩み、想定される利用シーンなどといった背景知識を踏まえて候補を提案するAI検索。商品の選択肢や趣味嗜好の多様化が進む現代に欠かせない“スタンダードな検索”として、今後浸透していくことは想像に容易い。そして、こうした提案の道筋の中に自社のサイトや商品が出てくるようにならなければ、熾烈な争いの土俵に上がることすらできなくなってしまう。そこで不可欠となるのが、「AIO(AI検索最適化)」だ。馬場氏は、事業者が取り組むべき項目を四つ教えてくれた。
「第一は、『データの構造化』です。商品在庫や価格、バリエーション、スペックなどをAIが理解できる形できちんと整備していきましょう。もちろん、こういった情報の更新性やチャネル間での同期も重要です。Shopifyでは『Shopifyカタログ』と呼ばれるAPIを提供することで、要件を満たすマーチャントであれば誰でもデータの構造化を進められるようにしています。
第二に重要なのは、『AIに対する信頼の蓄積』です。人間との間に信頼関係を築くのは大前提として、AIが『このブランドや商品を薦めても大丈夫』と評価できる根拠をインターネット上に用意していきましょう。扱うカテゴリーに専門性があると見なしてもらえるようなコンテンツや購入者からのレビュー、FAQを充実させたり、ユーザーコミュニティを形成したりするのも有効です。専門性と顧客体験の向上を戦略の中心に置いてアクションを起こすと、おのずとAIからも評価される施策につながると思います」
馬場氏は第三の項目として、「コンテキストの強化」を提示した。第二の項目にも通ずるが、検索するユーザーの問いに回答するため、信頼できる情報を収集するAIに拾ってもらえるような情報を先回りして置いておくことがAIOの基本となる。
その際に意識すべきは、一つひとつの商品に「誰のため」「何のため」といった“文脈”を盛り込んでいくことだ。スペックのような単なる事実を羅列するだけでなく、たとえば「花粉症対策」「母の日」といったように、利用シーンや商品選択のタイミングなど、購入のアドバイスがしやすくなるような情報を記載する。すると、そのストーリーに類似する質問と出くわした際に、AIから提案される可能性を高められる。
「最後に挙げるのは、『多チャネル・多データソースへの対応』です。商品を探す際、消費者も検索だけでなく、SNSなど様々なチャネルを見て比較検討していますが、それはAIも変わりません。むしろ、AIのほうがあらゆるデータを統合して信頼性や客観性を担保するため、接点を増やしておく必要性は増します。Shopifyでも、この点を意識して販売チャネルやSNS連携を円滑にする仕組みを備えていますので、既に利用されているマーチャントの方はぜひご活用いただけたらと思います」
