広告最適化が進むほど議論されるプライバシーの定義をどう捉えるか?
森野 この話を聞いて、「正しい情報発信の積み重ねは時間がかかって面倒だし、もう広告を出したほうが早いのでは」と考える人もいそうですよね。検索が一般化したら検索連動型広告が出てきたように、AIでも会話の内容に準じた広告が“提案”として自然な形で出現する流れが生まれるのかな?と予想しています。
河野 Meta広告のASC(Advantage+Shopping Campaign)やGoogle 広告のP-MAXを見ていると、最高の広告は広告っぽくないですからね。僕も、最近は広告をクリックする回数が増えているなと思います。「あ、これいいかも」って素直に思うんですよ。AIが自分の好みやトレンド、季節感まで理解して提案してくれますし、そこに「今セール中です!」なんて出たら買ってしまいますよね。広告がコンテンツ化してきているなと感じます。
受け手側にとってきちんと欲しいものが出てくれば、広告は邪魔者ではありません。ASCやP-MAXの成果が良いといわれるのは、その歯車がうまく噛み合っているからだと思います。
森野 広告もAIで賢くなりつつあり、そこに生成AIを使った会話がうまく融合するとより良い世の中になりますね。
河野 広告であっても、「AIさん、良い情報を見つけてくれてありがとう!」と思える世界になる可能性もありますからね。AIの中に広告が入り込むなら、そこを目指してほしいとも思います。
森野 そのためには、商品やサービスをAIに正しく理解してもらう必要がありますよね。内容がきちんと読み取れていれば、適切な形で届きますから。よくいわれる「フィードをきちんと整えましょう」や「説明文をしっかり書きましょう」は、ここに帰結するということですね。
ちなみに、広告以外の分野でもAIに正しく理解してもらうには、情報を与えたほうが良いですよね。ただし、自分のことを教えるとなるとプライバシーの問題が絡んできます。
河野 これは本当に難しい話だと思います。ただ、行動データまで「プライバシー」と捉えると、正直なところ既に僕らは想像以上にあらゆるところに情報を握られてしまっていますよね。だからこそ、「自分が本当に守りたいプライバシーは何か?」を考えるべきなのですが、その定義が世の中的にも個人レベルでも定まっていない気がします。これからはプライバシーの再設計が必要になってくるはずです。
たとえば「プロフィールウォレット」みたいな仕組みがあっても良いですよね。ウォレット内に名前、メールアドレス、住所、クレジットカード情報といった個人情報を記録しておいて、「ECサイトで買い物をするときはここまで共有してOK」「クレジットカード決済をする際にはもう一段階上の認証が必要」といったように、情報の公開レベルをコントロールできるのが理想だなと思います。
森野 自分でコントロールできれば、安心できる人も増えるでしょうね。自然とプライバシー意識も高まっていくと思います。同時に売る側だけでなく、買う側にも責任が増える時代になりそうですが。
