Amazonで売るのになぜフルチャネル戦略なのか
Amazon内での売上改善のために、Amazon外で施策を行う。田中氏がこうしたアドバイスをするのは、売上増をかなえる上でそもそもの需要拡大が必須だからだ。同氏はさらに、Amazonを含む各チャネルと消費者感度の関係を表す図表を見せながら、こう説明する。
「Amazonは、実店舗を含む販売チャネルの中では比較的感度の高い消費者を取り込めるチャネルで、イノベーター理論でいうアーリーアダプターからレイトマジョリティーをカバーしていると考えられます。あらゆる集客チャネル、販売チャネルの中でAmazonはほぼ真ん中を押さえており、フルチャネル・フルファネルの施策を展開する上で欠かせない要素だといえるでしょう」(田中氏)
図には集客チャネルの例も挙げられているが、この勢力図には“ある変化”が起きつつある。それは、SNSの台頭がもたらすマスメディアの改革と、TikTok Shopのローンチを代表とする集客チャネルと販売チャネルの融合だ。
「特にTikTok Shopは、新たなECモデルとして業界の空気感を大きく変えていくでしょう。『新しいチャネルができたからついでに』とTikTokを使ったコンテンツマーケティングを始めた事業者が、結果的にTikTokだけでなく、Amazonでの指名検索増などのリターンを得ている事例も出ています」(田中氏)
AmazonをはじめとするECモールとTikTok Shopの大きな違いは、消費者と商品の関係性だ。前者は消費者が商品を探す「検索型EC」であり、後者はAIのレコメンドにより商品が顧客を探す「ディスカバリー型EC」となっている。閲覧行動を軸にしながら偶発的なコンテンツ・商品との出会いを生むTikTokの仕組みは、これまでのチャネルにはない目新しいものであり、田中氏は「こうした特性と現代の消費者のカスタマージャーニーを踏まえた上で、フルチャネル戦略を仕掛けるべき」と提唱する。
「現代の消費者は、あらゆるチャネルを駆使して購入までに3回以上該当商品の情報に接触するといわれています。たとえば、あるコスメをAmazonで購入するまでに、テレビCM、店頭、SNS上でのインフルエンサーの投稿と様々なチャネルで接触していることは珍しくありません。こうした組み合わせが無数にあると考えると、特定のチャネルの施策に終始せず、フルチャネル×フルファネルで同時に施策を走らせる重要性が理解できるのではないでしょうか」(田中氏)

