「EC担当者」から「プロデューサー」に AI活用も含め変わる働き方
商品MD、販売支援なども含め、相互に成長し合える環境構築を目指す「and ST」は、顧客に対してもこの場で買うメリットを提供すべく、業界の常識をくつがえすような戦略を展開している。
その筆頭が、2025年9月より始まった「and STポイント」「dポイント」「楽天ポイント」のトリプルポイント施策だ。国内アパレル企業においてこの取り組みは初(2025年8月時点)となり、外部の経済圏からのユーザー取り込みと、収集したマーケティングデータの活用双方を叶えられる仕組みを構築している。
加えて、「and ST」は金融領域への進出も進めている。2025年10月27日にはみんなの銀行との協業により、パートナー支店「andST支店」を開設。2026年以降、「and ST」で商品をお得に購入できる「and ST 口座決済」や「and ST Wallet」(※いずれも仮称)の提供を予定しているという。
「たとえば、お客様がEC購入やイベント参加で貯めたポイントをこうした仕組みを介して現金化し、消費の活性化が図れないかと考えています。みんなの銀行様と連携しながら、こうした新しい仕組み作りをどう行っていくのか。こうした点もオープンにできればと思っています」
もちろん、消費者行動の起点となる「and ST」のサイトやアプリそのものの体験改善も欠かせない。櫻井氏は「“買い場”からの進化」と称し、アプリ自体のメディア化・エンタメ化についても言及した。
「アプリを『買うために開くもの』から『毎日訪れたい場』にするための挑戦も始めていこうとしています。既に提供している商品との出会いやスタッフによる発信に加え、エンタメやゲーミフィケーション、マッチングやコミュニティ要素の取り入れなど、『and ST』を軸に生まれるあらゆるきっかけを今後つなげ合わせていく予定です」
運営する場が変貌を遂げるということは、当然ながら同社に所属するスタッフの働き方にも変化が生じる。従来はいわゆる「EC担当者」としてサイト企画、ささげ運用、プロモーション施策実行などに従事していたスタッフも、「and ST」の進化とともに「プロデューサー」としてサービス企画やパートナー企業との共創など、“ワクワクを生み出す仕事”に軸足を置けるよう、改革を行っているそうだ。
「しかし、既存業務をそのままに新しい働き方を求めても、負担が増えるだけです。大事なのは引き算と考えていますので、AIを含むテクノロジーの活用を進めています。
私たちが行っているのは、人の仕事を奪うAI活用ではなく、人にしかできない仕事に注力するためのAI活用です。スタッフによるコーディネート投稿や世界観の表現、これらに共感してくださるファンのつながりをさらに強いものにできるよう、進化を続けていきます」
「自社ECのオープン化」という戦略から広がる様々な角度からのアップデート。櫻井氏は「現在『and ST』上で表現をしてくれている約4,000名のスタッフの個性をより表現できるような媒体に進化させたい」と意気込みを語りつつ、最後にこのように締めくくった。
「今後も『and ST』はコラボレーション、出会いの創出といったワクワクの提供に加え、仕組みや働き方を変えるような取り組みまで、あらゆることに愚直に取り組んでまいりますので、ぜひ期待していただければと思います」
