カテゴリーの縛りなく拡張 競合ブランドとも手を取り見出す勝ち筋は?
「and ST」は前出の通り、オープン化を進めていく中でカテゴリーの垣根なく、取扱ブランドを増やしている。2025年9月末時点で出店する他社ブランドは37、2026年2月までに50ブランドにまで拡大を予定しているという。
「同業は含めないといった制限は設けず、実際に直近ではニューバランスジャパン様やユナイテッドアローズ様にも出店いただいています。
取扱ブランドの選定軸は『お客様の声』です。社内では常に『どういったブランド・商品があればお客様にもっとワクワクしていただけるか』を議論しています。また、実際にお客様にアンケートを行い、どんなブランドがあったら嬉しいかを聞きながらプラットフォーム拡大を進めている状況です」
「数字を追うための出店ブランド拡大はしない」と櫻井氏は断言しつつも、プラットフォーム事業を確立させるためにアンドエスティHDグループが掲げる数値目標は野心的だ。最新の実績値(2025年2月期)では、GMV(流通取引総額)403億円、グループ内外の販売比率(外販比率)が98:2であるところを、2030年2月期までにGMV1,000億円、外販比率60:40にまで拡大させようとしている。
「この数字の達成には、出店ブランド様の協力も欠かせません。プラットフォーム化の目的や目指す先を共有し、どう新しい価値を作っていくか。目標を見失わないよう、きちんと言語化しながら『一緒に新しい価値を創出する』というスタンスで進めています」
単なる場所貸しでは意味がない スタッフも巻き込み生み出す“and”の価値
続いて櫻井氏は、一般的なECモールと「and ST」の違いについて言及した。オリジナリティある価値創出を図るため、「and ST」では単なる「場所貸し」ではなく、自社が保有する店舗、スタッフ、ものづくり・販促のノウハウといったアセットを活用したコラボレーションの場を創出。出店ブランドとの“and(化学反応)”によるつながりの強化も実践している。
「ピーチ・ジョン様のアパレルプロデュース、ワコール様のインナーウェアブランド『Wing』と当社グループのブランド『GLOBAL WORK』のコラボレーションに加え、特に『and ST』らしいのはメガネブランド『Zoff』様との取り組みです。『and ST』内のスタッフスタイリングページ『STAFF BOARD』や、SNSで多くの支持を集めるスタッフインフルエンサー3名とコラボレーションしたアイウェアを販売しました」
また、「and ST」はオンラインだけでなく、リアルに集う場を有しているのも特徴だ。2025年4月に東京・原宿にオープンしたフラッグシップストア「and ST TOKYO」でも、出店ブランを中心にポップアップを展開。同店を情報発信拠点として活用することで、立地柄多くの割合を占めるインバウンドや新たな顧客層との出会い、コミュニケーションを生み、オンラインだけでは難しい付加価値の提供を目指している。
