あえて“凹凸のある”ECサイトへ 「今年中に実現したい」
──中期経営計画では、2029年8月期までにEC売上860億円という大きな目標が掲げられています。そのために、EC事業部では今後どのような展開を考えていますか。
畑中 ビックカメラ・ドットコムの“フロント”にAIを活用していきたいです。昨今、バックオフィス業務の効率化にAIが導入されているケースはよく耳にしますが、お客様と直接向き合うフロントでの活用はまだまだこれから。具体的には、お客様の買い物をサポートする「エージェント機能」を強化し、コミュニケーションが取れるECサイトを作りたいと考えています。
ビックカメラ・ドットコムでは、「冷蔵庫 大容量」と検索しただけでも400件以上の商品が表示されます。その中から商品を探すお客様のストレスは、非常に大きい。まるで販売員に話しかけるように「こういうシーンで使いたいんだけど」と質問すれば、「この商品はいかがですか?」と提案してくれる。そんな売り場のようなECサイトを実現したいです。
もう一つは、ECサイトの“変動”です。お客様のビックカメラ・ドットコム上での行動履歴や滞在時間に応じて、商品ページの見た目や表示内容を最適化していきたいと思っています。これは単なるパーソナライズではなく、私はあえて「マイストア」と表現しています。
瀧澤 データ分析を進める中で、若年層のお客様が少ないとわかっています。そこで、年齢層に合わせてビックカメラ・ドットコムの見た目を変動させる、特定の価格帯の商品を集めたページを表示するなど、各ニーズに合わせた見せ方ができれば、新しいお客様との出会いも増えるはずです。

畑中 やりたいことは、まだまだあります。ECサイトは「全国が商圏だから、価値提供はフラットにすべき」といわれることも少なくありませんよね。しかし、実店舗が「地域密着」を謳うように、私たちは地域戦略×ECに可能性があると考えています。
北海道と沖縄県のお客様では、求める商品や買い物の価値観が違うのが自然です。東京23区内でも、地域によって異なる価値観があるかもしれません。この考え方をオンラインでも表現し、あえて地域によって凹凸のあるサービスを提供したい。次世代の体験型ECサイトとして、年内に具現化する計画です。
瀧澤 足元の施策も、着実に行っていきます。私の個人的な目標としては、データ分析によって、お客様に届く無駄なメルマガをなくすことです。膨大なデータの中から、良い点と悪い点を見つけ出し、改善していく。施策の傷口を手当てできるような環境を作っていきます。結果的に、ビックカメラ・ドットコムを、お客様が何度も足を運びたくなるようなECサイトに育てていければ嬉しいですね。