差別化要素はOne to Oneコミュニケーションとラストワンマイルの強さ
──では、実店舗のような接客をECサイトにどう反映しているのですか。
畑中 私たちはUXに非常にこだわっています。たとえば、ビックカメラ・ドットコムで「冷蔵庫」と検索すると、検索結果の右下にポップアップで「よくある質問」が表示されるんです。
多くの場合、価格帯やメーカーで絞り込む機能はありますが、ビックカメラ・ドットコムでは、それに加えて「在庫限り 旧モデル」「決済方法・無金利ローン」「設置について」といった項目を自然に提案しています。これらは、実店舗の販売員が実際によく受ける質問です。

また、One to Oneコミュニケーションにも力を入れています。具体的には、「こんな商品を取り扱ってほしい」というお客様からの問い合わせを拾い上げ、ビックカメラ・ドットコムでその商品を取り扱い始めたら、要望してくれたお客様に直接メールを送るんです。
「私の声で一つのECサイトが動いた」と感じていただくことで、お客様のロイヤリティは高まりますし、実際に購入につながったケースも多くあります。生の声を拾い、忘れない。これが、オンライン上での接客ではないでしょうか。
瀧澤 これから、メルマガにも一層力を入れたいです。今はビックカメラ・ドットコムを訪れたお客様に対して、大きくセグメント分けをして配信していますが、「このページでこの価格帯を見た人」など、細やかなコミュニケーションを目指しています。
──一方で、競合他社の家電量販店もEC事業を積極的に展開している印象を受けます。実店舗での接客ノウハウとEC事業の掛け合わせは、各社が強みとしているはずです。どう差別化していくのでしょうか。
畑中 現在の大きな差別化要因は、2024年9月2日から開始した「全品送料無料」です。以前より、お客様から送料無料を望む声は多く上がっていました。そんな中、2024年問題の影響で、社内では物流の逼迫を懸念する声があったのも事実です。ところが、実際に全品送料無料サービスを開始すると、懸念されていたような大きな問題はありませんでした。
これは、ビックカメラのお客様が関東圏に集中していることに着目したからです。送料を無料にすると、その分お客様が商品を購入しやすくなり、当社としては配送する物量が増えます。結果的に、関東圏での物流網がより細かくなるんです。
そうすると、ドライバーは近い配送先を効率的に回れるようになりますよね。同じ労働時間で以前より多くの荷物を運べるため、ドライバーに安定的な物量を提供できます。お客様にとっても、物流業界にとっても「win-win」な施策なはずです。顧客体験向上とラストワンマイルの効率化の観点から、思い切って始めることができました。全品送料無料であることを多くのお客様に知ってもらうために、積極的に訴求していきたいです。
この施策が実現できた背景には、物流拠点を自社でもっている点もあります。関東圏はもちろん、札幌、東北、名古屋、大阪、広島、沖縄と、合計9つもの物流センターを構えています。お客様の「なんとか今日中に配送してほしい」といった要望にも、グループ会社である株式会社ビックロジサービスを軸に、23区の当日配送を実現しています。ラストワンマイルに強い。これは、当社ならではだと自信をもっています。