アッパーファネルの広告活用事例も着実に増加
実際にアッパーファネル(認知・関心層)への広告投資が成果を上げている事例も増えている。ある事例では、FireTVを活用した広告配信を行った結果、スポンサー広告単体時と比較してインクリメンタルリーチ(純粋なリーチ増分)率が66%以上を記録した。
さらに重要なのは、複数の広告に接触したユーザーの転換率である。「重複接触によって、新規顧客の転換率が3.6倍以上に増加した」というデータも出ている。
また、新商品発売時にスポンサー広告と並行してFireTVへ広告投下を行ったケースでは、通常であれば発売直後のピークを過ぎると枯渇する新規獲得数が、1月以降も継続的に獲得できたという。これは、顕在層向けのスポンサー広告だけではリーチできない層に対し、動画広告が有効に作用した結果と言える。「広告出稿後も新規が取れていたので、アッパーファネル含めた施策が重要になってくる」ことは明白だ。
アッパーファネル施策には可能性がある
Amazonにおける動画活用の波は、プライムビデオやFireTVに限らず、縦型動画の流行なども含めて無視できないトレンドとなっている。EC担当者は、目先のROAS(広告費用対効果)だけでなく、店舗全体の売上拡大、ひいてはブランドの持続的な成長を見据えた戦略が必要だ。
酒井氏は「新規獲得のコストを下げるためには、一定の新規顧客を流入させるアッパーファネルの施策が必要であり、AMCのような分析環境を活用していくべき」としている。
もし現在、スポンサー広告で一定の予算を投下し、ROASが限界まで来ているのであれば、効率の悪い配信部分をカットし、その予算をFireTVやAmazon DSPといったアッパーファネル施策にアロケーション(配分)するなど、全体最適に取り組む時期に来ている。
