指名買い「ブランド計画購買」を増やす2つのアプローチ 一点突破から面展開へ
顧客の購買行動について考察するために、購買行動を「ブランド計画購買」「カテゴリー計画購買」「非計画購買」に分解してみていきます。具体的にスキンケアコスメの具体例を交えながら、ブランドが取るべき打ち手を整理します。

まず「ブランド計画購買」とは、購入前から特定のブランドを選んでおり、その商品を購入するために、実店舗やECサイトを訪れる「指名買い」を指します。
かつては、テレビCMなど限られた情報接点を通じてブランド認知が形成されていましたが、現在はSNS・レビュー・動画・比較サイトなど、顧客が接触する情報源は非常に多様化しています。その結果、顧客は複数のブランドを比較・検討しながら、最終的にどれにするか決めるようになりました。
当社の調査では、カテゴリーによって幅はありますが、あらかじめブランドを決めて買いに来る顧客は約30~50%にとどまっています。半数以上は、ブランドを決めずに実店舗やECサイトを訪れているのです。
特に化粧品などのカテゴリーでは、トレンドの移り変わりが激しくブランド数も非常に多いため、継続的に同じブランドを使いつづける顧客は少数派です。実際、多くの顧客が1年~数年のサイクルでブランドを乗り換えています。
各社、指名買いの顧客を増やしたいのはいうまでもありません。ブランド計画購買の比率を高めるには、既存顧客のリピート促進と、新規顧客の“指名化”という2つのアプローチが必要です。
既存顧客のリピート促進
定期購入や再購入時のクーポン配布など、繰り返し購入を後押しする仕組みを整えることが基本です。購入後の体験を磨き、次もこのブランドを選びたいと思ってもらう工夫が求められます。
新規顧客の“ブランド指名化”
初めてブランドに触れる顧客に、自社と他社の違いを強く印象づける必要があります。このとき有効なのが「カテゴリーエントリーポイント(CEP)」という考え方です。
カテゴリーエントリーポイントとは、「顧客が商品やブランドを想起するきっかけとなる状況・タイミング・シーン」のことです。たとえば「乾燥で肌が荒れたとき」「30代からのエイジングケアを始めたいとき」など、生活者が置かれる文脈にブランドを結びつけることで、成分や機能といった特徴以上に強く記憶され、選ばれやすくなります。このように、単なる商品スペックではなく、「いつ・どんなときに思い出してもらえるか」を設計することが、ブランド計画購買を増やすポイントです。
多くの新興ブランドが成功している背景には、「特定の1~2個のカテゴリーエントリーポイント(CEP)に集中して認知を獲得している」という共通点があります。つまり、まずは「○○といえばこのブランド」と思い出してもらえる小さな文脈(シーン・タイミング)での想起に絞って、ポジションを築いているのです。
その後、ブランドが拡大していくにつれて、他のCEPでも認知されるようになり、複数の文脈で顧客に想起されるようになります。この「想起の幅の広がり」が、ブランドの成長とともに進んでいく自然なステップです。最初からすべてを狙うのではなく、一点突破から面展開へと広げていく設計にあります。