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ECzine Day(イーシージン・デイ)とは、ECzineが主催するカンファレンス型のイベントです。変化の激しいEC業界、この日にリアルな場にお越しいただくことで、トレンドやトピックスを効率的に短時間で網羅する機会としていただければ幸いです。

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ECzine Day 2025 June【オンライン+スタジオ観覧型イベント】

2025年6月12日(木)10:00~17:25

押さえておきたい!ECトレンド図鑑

本谷知彦氏・コマースメディア井澤氏と考える OMOの王道が変わる前に身につけたいECグロースの視点

判断を間違えない「データを読み解く力」は“足”で稼げる?

本谷 先ほどのチャネル戦略の話にも通じますが、マーケットを客観視する前に小手先の施策や部分最適を進めてしまいがちなのも、業界全体の課題です。

 たとえば、「売上10億円の壁をどう乗り越えるか」といった質問をよくいただきますが、マーケットのサイズが1兆円か、100億円かで難易度は大きく変わります。シェア率0.1%と10%の戦い方が同じはずはないですし、現在のCVRやF2転換率が何%なのか、現在の売上と目標がどれだけ乖離しているかによっても、打ち手の数や踏むべきステップは当然異なります。型にはめていいはずがないんですよね。井澤さんと意気投合したのは、お互いこの考えが前提にあったからでもあります。

井澤 本谷さんと初めてお会いしたのはある企業のイベントだったのですが、データについてものすごく楽しそうに話すんですよね。「こんな人いるんだ!?」と驚きました。ちょうど、とあるカテゴリーにEC事業者として参入したいタイミングだったので市場調査をお願いしたのですが、アプローチの仕方が似ていたのも印象的です。

 また、本谷さんはデータ“だけ”ではなくて、足で稼ぐタイプでもあります。EC業界に携わりながらちゃんと店を見る人って意外と少ないんですよ。

コマースメディア株式会社 代表取締役 井澤孝宏氏
コマースメディア株式会社 代表取締役 井澤孝宏氏

本谷 マーケット感覚を失わないようにするためにも、私はよく店頭に足を運びますね。

井澤 売り場の“今”を把握しているから、いきなり数字を見せられてもある程度の仮説が見えているのだと思います。あとは、データで裏付けして解を導き出すという。

 このスタンスは、EC担当者だけでなく経営者も見習ってほしいです。ビジネスに重要な決断を下す立場の人が現場を見ていない状況で、正しい判断はできませんよ。

共倒れを防ぐために把握したい 経営者・担当者が陥る罠と解決策

本谷 これまで様々な例を見てきましたが、売れない理由の多くはマーケットに対する解像度の低さに起因しているなと思います。私は「担当者盲目症候群」と呼んでいるのですが、EC担当者も経営者も「良い評価を得る」がミッションになってしまうと客観的な思考ができなくなってしまうんですよね。売れない理由が商品や売り方のせいな可能性もありますが、正しいマーケット理解ができていないせいでスタート地点から道を間違えているケースも往々にしてあります。

井澤 私は、経営者には「経営者の仕事をしてください」とよく言います。日本だと優秀なプレーヤーが出世して経営側に回るケースがほとんどですが、「経営」と「執行」は判断に必要な視点も求められる力も異なるので、本来はロール(役割・権限)を分けるべきです。日本の企業は、執行役員がCxOを兼ねてしまっているなど、線引きが曖昧だなと思うことが多々あります。

 ひたすらものを作って売れていた時代ならそれでもなんとかなるのですが、「経営」「執行」の役割分担ができていないまま売れないターンに入ってしまうと、気づいたときには多くの負債を抱えて手遅れになり倒産……となりかねません。

━━手遅れになる前に、お二人のような方に相談いただきたいところですよね。

井澤 コンサルティングの仕事をしていると、経営者やEC責任者の方からよく相談をいただきますが、その内容を踏まえて現場へヒアリングをしてみると「実は前々から危機感を抱いて提言していた」とよく言われます。マーケットの空気感はやはり現場のほうが日頃から体感しているんですよね。そうなると、この結果はやり方を変える判断を早急に取れない経営側の責任だよね、という話になります。

本谷 正しいマーケット理解=解像度の話になるんだと思います。ビジネスはパズルのようなもので、空いている部分に合うパーツを探して絵を完成させなければならないんですよ。「経営」をミッションとする方々こそパーツ一つひとつを理解し、自社にあるもの・ないものや調達すべきものを判断する必要がありますが、ぼんやりとした理解のまま進めている方も多いのではないでしょうか。それだと、変化に適応しきません。

井澤 でも、経営者側の苦悩も理解はできるんですよ。今はヒット商品の賞味期限がとても短くなっていて、もっても3年程度です。データが取れる時代の弊害ですよね。現場が各施策をコツコツと頑張って大きな売上を作ってくれても、次の年には競合商品が出てきますし、その動きを逐一把握するのが難しいと思う方もいるかもしれません。

 現場のほうがリアルタイムで解像度高く市場を理解できているのなら、権限を渡したり進言を素直に受け入れたりするのも一つの手です。それをするには、任せる人を間違えないようにするのも大事なところですね。あとは、百発百中を求めない。複雑な時代なので、うまくいくほうが奇跡です。引き際をきちんと決めておけば、蓄積した「うまくいかなかったデータ」を使って新しいチャレンジができます。すると、失敗も「収穫」になりますから。

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他社事例より“あるスポーツ”から行動のスタンスを学ぼう

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この記事の著者

ECzine編集部 木原 静香(キハラシズカ)

立教大学現代心理学部映像身体学科卒業後、広告制作会社、不動産情報サイトのコンテンツ編集、人材企業のオウンドメディア編集を経験し、2019年に翔泳社に入社。コマースビジネスに携わる方向けのウェブメディア「ECzine」の編集・企画・運営に携わる。2025年4月1日より、ECzine 副編集長を務める。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://eczine.jp/article/detail/16962 2025/08/04 07:00

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