顧客・実店舗・ECの全方向にメリット 機会損失を防ぐOMOの仕組みとは
EC事業を強化しているとはいえ、これまでZoffは実店舗を軸にビジネスを展開してきた。スタッフコンテンツの拡充以外にも、売上の付け方など実店舗側とEC側の関係調整は発生する。だからこそ「お互いをライバルと考えるのではなく、協働するパートナーと位置付けている」と猪俣氏は語る。自社ECサイトが、顧客と実店舗をつなぐ“ハブ”としての役割を担っているという。
「たとえば、人気のコラボ商品が実店舗で即完売してしまった場合、在庫のある自社ECサイトへ顧客を誘導することで、販売機会を逃さずに済みます。また、自社ECサイトで事前予約を受け付けた後に実店舗へ展開すると、顧客の年齢層や性別などの予約データに基づいて、在庫配分の調整が可能です」
その好例が、2024年に実施されたある人気キャラクターとのコラボ企画だ。自社ECサイトではすぐに完売し、実店舗でも大きな話題を集めた。しかし、客層の違いなどから、在庫が一部残る実店舗もあったという。
「在庫が残った際『どこで売るのがベストか』が悩みどころでした。実店舗だと、人気商品を求めて朝から並ぶお客様もいます。その案内対応など、店舗スタッフにとってはかなり負担が大きいのです。また、一部店舗にのみ展開している商品だと、すべてのお客様が買いに来られないのも、避けたい理由の一つでした。
そのため、在庫を自社ECサイトに集約し、全国どこからでも同じ条件で購入できるようにしました。全店舗で『この日に自社ECサイトで販売します』と一斉に案内できる体制を整えることで、社内全体で足並みを揃えて動けます」
社内連携を強化しながら、着実に成長を続けているZoffのEC事業。今後もOMOの推進によって、新たな顧客接点を創出していく。まずは、サングラス市場で地位を確立する考えだ。
「『サングラスといえばZoff』と認知されるブランドを目指しています。日本のサングラス市場は、海外と比べてまだまだ伸びしろがある。ファッション、ライフスタイル、アイケアなど、様々な切り口から訴求し、より多くの方にサングラスを取り入れていただきたいですね」
サングラスは度なしでも購入できるため、EC販売との相性が良いカテゴリーだ。猪俣氏は「サングラスがZoffでの初めて買い物をするきっかけになれば」と期待の色を見せた。
「EC販売には“売り場の制限がない”という強みがあります。どれだけ商品を並べてもスペースに困らない。レコメンド機能を活用すれば、ユーザーに最適な商品を届けることもできる。今後も、EC販売のメリットを最大限に活かしながら、幅広いニーズに応える商品・サービスを展開していきます」