世代を超えたファン作りを目指すミキハウス リペアサービスの効果は
ベビー服・子ども服ブランド「ミキハウス」を展開する三起商行株式会社は、2022年にリペアサービスの提供を開始した。以前より顧客から要望の声が上がっていたという。執行役員 部長/経営企画本部 ESG推進部 平野芳紀氏は「ご自身やお子様が昔使用されていた子ども服がもう1度生き返ることで、いっそう愛着が生まれる」と話す。
申し込みは電話や実店舗のカウンター、オンライン上で受けつけている。傷つき方によって対応が異なるため、バイオーダー制だ。特に若い世代のニーズや困りごとなども含めて、すべて相談窓口に集約される。リペア費用は設定してあるものの「ブランディングの意味合いが強い」と平野氏。
「ミキハウスは、2021年で50周年を迎えました。世代を超えてブランドと商品を愛用していただくために、リペアの窓口ではお客様に寄り添った対話により注力していきます。そして、さらにファンになっていただければ嬉しいですね」(平野氏)
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中には、祖母が孫を連れて商品を買いに来るケースも少なくない。
「お子様が成長された思い出とともに、ミキハウスも思い出してもらえるブランドを目指します」(平野氏)
球場で振れなかったバットをキッチンで振る? ミズノのアップサイクル
総合スポーツ用品メーカーのミズノ株式会社は、2社とは異なるアプローチを行っている。同社のグローバルイクイップメントプロダクト部 LH・WB・SF企画課 浅野麻美氏は、取り組みの内容をこう説明する。
「廃棄予定のバットから、コップや箸置きといったテーブルウェアを生み出しています。バットは米国から円柱の状態で入荷され、職人が削って生産しています。その過程で、虫がいたり傷があったりするものは、使用中に折れる可能性があるため廃棄となるのです。検査は非常に厳しく、以前は年間数千本が廃棄されていました」(浅野氏)

ミズノのアップサイクル商品の特徴は、スポーツをしていないときにも使用できる点にある。
「バットの柄をフライパンの持ち手に使用した商品もあります。球場で振れなかったバットをキッチンで振る。野球をしていた方は、当時の思い出が蘇るのではないでしょうか。
バットから新たな商品を作るには、型の制作から始めなければなりません。生産にコストがかかる分、販売価格も比較的高額です。それにもかかわらず、特に野球ファンの方からの問い合わせが多く寄せられています」(浅野氏)
ほかにも、同社ではグローブの残革で名刺入れやマウスパッドを制作。また、企業とコラボレーションするケースもある。そんな取り組みを行うためのポイントとして、浅野氏は“協業”を挙げた。
「1社だけではできることが限られます。周りに協力を呼び掛ける中で、他社とのつながりを生み出せるのもメリットです。結果的に、タンブラーなど、スポーツをしていない方にも手に取ってもらえる商品の開発も実現できます。どのような取り組みを行っているのか、より多くの人に伝えていきたいですね」(浅野氏)
LTV向上が叫ばれる今の時代、リセールやリペア、アップサイクルといった取り組みが、ファン創出のきっかけとなるかもしれない。