THE NORTH FACEが見つけた二次流通サイトにない強み
本イベントに参加していたTHE NORTH FACEを展開する株式会社ゴールドウインは、長年、アウトドア商品を中心にリペアサービスを提供している。縫製、圧着による穴の補修など、20年以上にわたってノウハウを蓄積してきた。2022年からは、一部商品を対象にリセール事業をスタート。現在、直営店や取引先の店頭に商品回収用のBOXを設置している。
ザ・ノース・フェイス事業本部 ザ・ノース・フェイスアパレル事業部 エキスパート 畑野健一氏は「当社がもつリペア技術を、さらに環境に良い取り組みにアップデートした」と語る。
「当社のコンセプトは『PLAY EARTH(地球と遊ぼう)』です。次世代に良い環境と楽しみをつないでいくためには、地球環境を維持する義務があります」(畑野氏)
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同社の取り組みのうち、THE NORTH FACEのリセールはキッズ商品に特化している点が特徴だ。成長が早い子どもは、1~2年で洋服のサイズが合わなくなってしまう。そこで、サイズアウトした洋服を顧客がどう扱っているのか、同ブランドが独自調査を行った。調査の結果「お下がりとして誰かにあげる」人が最も多かった一方で、「廃棄する」と回答した人が42.8%にのぼったという。
「ブランド調査のため、回答者の多くは『THE NORTH FACEを好きな人』だと予測できます。それでも、多くのお客様が廃棄を選択している事実に衝撃を受けました」(畑野氏)
その中で顧客から聞こえてきたのが、リセールを望む声だった。
「古着は以前よりファッションジャンルとして確立されていました。しかし、自社の事業とつなげるのには、時間がかかりました。単に回収した商品を販売するだけだと、既に二次流通のプラットフォーマーが行っています。それでもゴールドウインがリセールを行う意義は、当社の強みであるリペア技術だと考えました。
当社は商品のロングライフを重視しています。機能性が高い分、決して安価ではない商品だからこそ、大切に長く使っていただきたいです」(畑野氏)
こうした取り組みにあたって、ぶつかるのが収益性の壁だ。
「当社が取り扱っているキッズウェアのリペアは無料で行っています。企業としてのコスト負担は小さくありません。一足飛びに収益を伸ばせるような事業構造にするのは難しいですが、着実にサービスを提供していくことで新しい価値観が生まれます。リペアの依頼数は年々増えており、お客様の意識の変化を実感しています」(畑野氏)
同社は、2024年10月からリペアサービスをすべてオンライン上で受けつけている。リセール商品の買い取りも、自社ECサイトで行う可能性を模索している段階だ。
「リペアや商品回収を通じて、お客様との双方向のコミュニケーションに活用できる方法も探していきたいです」(畑野氏)