D2Cは“購入”以外の資産も得られる 「MN」の展開から見えたこと
D2Cブランド「MN」では、現在80色以上のアイカラー、リップ&チーク、ハイライターから顧客自身が好きな色を組み合わせてオリジナルのメイクパレットを作れる「MY MIXED PALETTE」と、“転生カラーネイル”と称したマニキュア「CREATURE'S NAIL」の2商品を展開。伊勢半が既存製品で主にコミュニケーションを図るミレニアル世代よりも若い、Z世代の多様な価値観にフィットする商品展開やマーケティングを目指しているという。
「Z世代は、物心ついた頃から豊富な情報チャネルに囲まれていた世代です。伊勢半は、メーカーとしてこうした人々がどのようにして商品と出会い、何を基準に購入に至るかをきちんと理解しなければならないと考えました。そこで選んだのが、自分たちで商品を作れるメーカーの良さを生かした上で、直接販売までしてZ世代を知るという道でした」
MNの構想を練る中で同社が行き着いたのは、顧客が自身の価値観にぴったり合ったものを選べる商品設計だ。趣味嗜好が多岐にわたる現在、メイクをするにも人によって好みの色味や質感は様々で、紋切り型での提案ではZ世代の目指すオリジナリティーの探求に寄り添えない。そこでMNはECサイト内に診断コンテンツを用意し、選択肢を提案しながら顧客の選び方や価値観を収集・可視化できる設計を実現した。
「広告経由で入ってきた顧客がどんな色を選ぶのか、購入者が選んだパレットの色だけでなく、離脱した顧客が選んだ色、購入者が最終的に選ばなかった色など行動の全容を把握できるのが、ECサイトでカスタマイズを提供する最大のメリットです。ここから得たインサイトは、私たちにとって大切な資産となります」
こうしたカスタマイズコンテンツを軸に展開するMNは、Shopifyを採択している。MNを立ち上げた2021年当初、既に存在していたISEHAN online storeは別のカートシステムを利用していたが、MNのEC構築を通じて拡張性を体感し、2022年に同サイトもShopifyへ移行。このタイミングで、グループ企業であるエリザベスの商品もISEHAN online storeに取りそろえることとなった。
「扱うブランドや商品が増えたら、それらが埋もれないように積極的に顧客へアプローチができる設計にしなくてはなりません。しかし、伊勢半には専門的なエンジニアはおらず、フルスクラッチでこうした機能を開発するのは難しい状況でした。
しかし、MNのECサイトを構築する際に、Shopifyであれば既存のアプリを組み合わせて私たちのやりたいことがおおよそできるとわかりました。その手軽さに惹かれ、ISEHAN online storeもShopifyに移行することを決めました。おかげで、今もそれぞれのECサイトを数人のメンバーで運営できています」