2025年の越境ECの分かれ目は「言語・翻訳に投資できるか」
ここまで、ECサイトの信頼性を高める上での翻訳レベルの重要性について語ってきたが、徳田氏は改めて「2025年に越境ECで売上を創出したいのであれば、『言語にお金をかける』という考えをもってほしい」と強調する。
「EC事業者は売上を伸ばす=顧客接点を増やす必要があると考え、広告への投資をためらわない傾向にありますが、前出のようにECサイトの言語レベルがボトルネックになると、投資の意味を失ってしまいます。個人的には、越境ECサイト構築時に『レベルの高い翻訳を施す』を要件に入れ、初期投資時の必要経費と捉えていただきたいと思っているほどです」
AIの発展により、自動翻訳のレベルも飛躍する昨今だが、安心して購入してもらうにはまだ「人間のひと手間が必要」と述べる徳田氏。しかし、語学に長け、海外市場の知見を有している人材を各社で採用するのは、この人手不足社会において現実的ではない。
すると、必然的に翻訳やコピーライティングを外注することになるが、そこで重要なのが「自社が“伝えたいこと”“伝えられること”“伝えるべきこと”の言語化と、文化に対する理解」だと徳田氏は続ける。
「文化や習慣など、前提条件が違う海外に向けて、日本語で表現したキャッチコピーをそのまま使っても当然ながら伝わりません。また、日本語から英語に直訳すると一般的に足りない語彙を補うために文章が長くなるケースが多く、キャッチコピーの意味を果たさなくなってしまう点にも注意が必要です。
意訳が必要となる箇所では、訴求したい国・地域の文化的背景、嗜好などと照らし合わせながら訴求ポイントの変更や言い換えをしなければなりません。そこで必要になるのが『自社は何を表現したいのか』といった意思です」
たとえ腕利きな翻訳家に依頼できたとしても、ブランドの世界観や商品の魅力といった前提条件の共有ができなければ、適切な意訳を行えなくなってしまう。異文化圏での商売に挑む際には、改めて競合との比較を含めた自社理解や顧客理解の場を設けるのが、企業や組織のリーダーの責務ともいえるだろう。
「単なる言語のプロを雇っても、越境ECは成功しませんし、テクニックだけで乗り切れるものでもありません。双方の貴重なアセットをどう有効活用できるかが、成否の分かれ目となるでしょう。自社理解に加え、日本とは異なる市場環境・顧客への理解を深めつつ、まずは地盤固めから取り組んでいただければと思います」