「ハルメク おみせ」好調の裏にあるメディア戦略を紐解く
ハルメク おみせが好調な理由について、勝谷氏は「新規顧客獲得」と「顧客化」の二つの視点に分け、説明を続けた。前者は、新店オープン時の「メディアの活用」と、「広告媒体の積極活用」が功を奏しているという。
「当社では、ハルメク おみせの新店舗がオープンする際にプレスリリースを発信するだけでなく、ハルメクの広報が百貨店の広報のサポートを受けながら地元のテレビ局や新聞社へ、オープン前日や当日の撮影交渉に向けたメディアキャラバンを行っています。過去にこうして露出枠を確保し、オープン初日だけで約300万円の売上を記録した経験があり、メディア活用の重要性を実感したことから、定番化して取り組むようになりました」
「広告媒体の積極活用」については、冒頭で触れた新聞広告の例を紹介。ハルメクでは、通販事業の宣伝として年間約300回の新聞広告出稿を行っている。ここに出稿エリアの近隣店舗名を記載すると、「実物を見たかったので来店した」という顧客が増えるそうだ。
「店舗があると記載すると、通販の信ぴょう性を担保できますし、『百貨店に出店している=この商品は一定の品質を保っている』と判断され、ブランドとしての信頼度も高められます。定期的に出稿することで、新しいお客様との出会いとお買い求めいただける好循環が生み出せている状況です」
なお、ハルメクにとっての広告媒体はマス媒体に限らない。百貨店が外商や友の会などのサービス会員に向けて送付する販促物も、「必ず出稿する」というほどの力の入れようだ。
「こうした媒体に出稿すると、百貨店に定期的に来店されるお客様を『ハルメクのお客様』として取り込めます。リーチできる人数は限られますが、新規顧客獲得を進めるには重要な施策です」
片方だけがメリットを得る施策は長続きしないが、同社には雑誌やカタログから獲得した顧客も存在する。そのため、ハルメク おみせが館の中にあることで、百貨店にとっても新規顧客との出会いが生まれ、結果的に相互送客となっている点も特徴だ。
「たとえば、『ハルメク おみせがあれば定期的に来店するから、百貨店のクレジットカードを作ろう』『友の会の会員になろう』といった流れが生まれています。このように互いにメリットを享受できている状況も、良好な関係構築につながる理由の一つではないかと考えています」
新規獲得は顧客目線であえてのアナログ化 改善後の変化は?
続いて勝谷氏は、「顧客化」についてハルメク おみせが注力している二つの取り組みを次のように紹介した。
- 新規顧客の会員登録の徹底
- 顧客の年齢に近いスタッフが、売り込みではなく実感を語る接客を実施
「新規顧客の会員登録の徹底」については、初めてハルメク おみせを利用する顧客に対してアプローチを図っているが、ここにデジタル化する現代とは逆行するハルメクならではの工夫が存在している。
「かつて、メルマガやLINEの友だち登録を促していた時期もありましたが、お客様から『メールアドレスがわからない』『スマートフォンの操作が難しい』といった相談が度々寄せられ、スタッフが付きっきりになる状況が多発しました。
スタッフから『本来すべき接客やオペレーションができない』という声が上がり、検討した結果、手書きで登録してもらうのが一番スムーズでお客様にとっても抵抗感がないと判明したのです。現在のフローであれば約2分で会員登録が完了します」