「応援購入」の波を全国に広げる菊地氏が伝えたい「ファン」の重要性
「ファンとの関係性づくり」の重要性を解説する本連載。話者の菊地凌輔氏は、大学在学中に教科書を半額以下で取引できるサービスを立ち上げ、様々なメディアに取り上げられた原体験から、マクアケで働く楽しさやファンの存在の大切さを感じているという。学生時代からマクアケ関西支社の立ち上げに携わり、後に他の地域支社立ち上げも手掛けた同氏が考えるEC戦国時代に必要なファンとは何なのか。まずは「ファンの存在がなぜ今大事なのか」から解説する。
市場動向を理解し「強いブランド」になろう
「ファンの存在を意識した動き」が求められる背景には、購買行動のトレンドも関係する。ここでは3つのポイントに絞って、今の時代の潮流を説明していく。
1. トレンドや市況感の変化に耐えうる強い売上基盤構築が求められる時代
たとえば、コロナ禍に加速したアウトドアブームをけん引してきたスノーピークは、2023年12月期の連結決算で、純利益について前年比99.9%減の100万円であったと発表している。キャンプ道具メーカーで働く菊地氏の知り合いも、「2020年から2021年にかけて発注した商品がようやく納品されてきたが、大量に在庫を抱えている」と現実を語っているという。
在庫を抱えれば、当然ながらキャッシュアウトが発生しやすくなる。コロナ禍に限らず、短いスパンで市況が移り変わる中で、トレンドに左右される商売をし続けるのは、リスクが高い。トレンドや市況感の変化に耐えうる強い売り上げ基盤構築が、各企業にとって喫緊の課題だ。
そのために非常に大事なのが、市況感が変わろうとも自社ブランドを指名買いしてくれたり、何度も何度もリピートしてくれたり、そのブランドのよさを周囲に広めてくれたりする熱狂的なファンの存在である。荒波を乗り越える上で、この視点は欠かせない。
2. 広告や一方通行の営業だけで売るのが難しくなっている時代
eコマースでものを売る時代に、課題になるのが「集客」だ。オンラインでいかにリーチしていくか、ブランド側はテクニカルな競争になる一方で、生活者もどんどん賢くなっている。個人情報保護の観点から進むサードパーティCookieの規制により、ターゲティングの精度が落ちる一方で、顧客獲得コストが上がっている点も課題だ。広告や一方通行の営業だけで売るのが困難となる今こそ、「ファンとの関係構築が大事」だと菊地氏は語る。
強い信頼関係で結ばれたファン相手に、小手先の営業や広告は当然ながら通用しない。その代わり、一度ファンになると関係性が崩れないかぎり「応援」の意味も含めて購入し続けてくれるケースが多いのは、Makuakeで成功する事業者やブランドを見ても明らかだ。この境地に至ると、新規顧客を増やすこと“だけ”に注力しなくてもビジネスが前に進むようになる。