スタートアップ気質をもつアジアのアパレル
アジア各国の新興ブランドが集まり、独自の世界観を醸し出す「60%」。2018年のオープン以降、約5年で月間利用者数は55万人、SNS総フォロワー数は47万人に達し、急成長を遂げている。その創業者の一人が、松岡那苗氏だ。アジアファッションの魅力に気づき、代表取締役 真部大河氏とともに同サイトを立ち上げた。
「Instagramの投稿で『格好良い』と目を惹かれるブランドは、すべてアジア発のものでした。当時は“アジアファッション”という概念すらなかったため、新しいプラットフォームを作りたいと思ったのです」
松岡氏は元々、外資系のラグジュアリーアパレルブランドでEC運営を担当していた。長い歴史をもつブランドのため、既定路線を変えるのは難しかったという。一方、アジアのブランドは「枠に囚われない点が魅力だ」と語る。
「アジアファッションの歴史は、ヨーロッパと比較するとまだ浅いです。その分、当たり前の規定や規則が確立されておらず、良い意味で羽目を外せます。SNS上でも、ユニークな商品の見せ方をしたコンテンツが珍しくありません。型にはまらない点に、スタートアップ企業のような雰囲気を感じています。意思決定やアクションに落とし込むスピードも速いです。『60%』の出店ブランド数が5年で1,500まで増えたのも、そうした特長の表れでしょう」
取り扱うブランドは、主に「60%」のキュレーターによって選定されている。SNSのフォロワー数やアジア圏の顧客数といった定量的なデータに加え、定性的な要素も判断材料の一つ。特に“バズるかどうか”の感覚は「60%」の強みだ。「このブランドを販売してほしい」など顧客からの問い合わせやDMも多く、松岡氏は「声を上げられるプラットフォーム」と表現する。
毎週のように追加される新ブランドのほとんどは、日本初上陸のものだ。まだ知名度は高くないが、それぞれの個性が「60%」の世界観を形成している。
「インフルエンサーが影響力をもったように、今はブランドも“個”が強い時代です。SNS起点で立ち上げられた新ブランドが、大手ブランドの何倍もの売上を上げることもあります。これが、“ニッチさ”に着目する理由です。何にしても、最初は一人から始まりますよね。その一人を集めていくイメージで、『60%』を運営しています」