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生成AIの台頭で進化するCS データ収集にも影響
EC事業者にとって、生成AIは今や欠かせないトピックスの一つだ。2023年11月には、OpenAIが「ChatGPT」を改良した「GPT-4 Turbo」を発表。この基盤は2023年4月までの情報を網羅しており、以前よりも最新の情報が反映されるようになった。
また、Googleによる生成AI開発の動きも見逃せない。同社は2023年12月に「Gemini」を公開して以降、2024年2月8日(米国時間)には複雑なタスクに対応する最上位モデル「Gemini 1.0 Ultra」をリリース。わずか7日後の2月15日には、同モデルと同等の性能をより少ない計算リソースで実現する「Gemini 1.5」を公開するなど、すさまじい勢いで進化を遂げている。
「Gemini 1.5は、Googleが保有するあらゆるデータをリアルタイムで回答に反映している点が特徴です。このアップデートの速さに対抗し、OpenAIのChatGPTも学習速度が上がっているのでしょう。EC事業者にとって、進化し続ける生成AIの活用は急務といえます」
そんな中、藤田氏が注目するのが、チャットボットをはじめとするCS領域での生成AI活用だ。たとえば、LINEヤフー株式会社は、2024年2月に「LINE AIアシスタント」の提供を開始した。OpenAIのAPIなどを通じ、生成AIがLINE上でユーザーからの質問や相談に答えるサービスで、現時点では一般向けに提供されている。
「一般ユーザーから良い反応が得られれば、法人向けサービスへの拡張も期待できます。『LINEヤフー for Business』のメニューに加わる可能性も考えられるでしょう。その際にスムーズに活用できるよう、EC事業者も今のうちからLINE AIアシスタントの機能を試すなど、情報収集しておく必要があります」
問い合わせ対応などを行うチャットボットは、顧客との会話データの蓄積にも役立つ。生成AIを活用すれば、その効果をさらに向上させられるだろう。CSの効率化に加えて、顧客の解像度が上がる点は大きなメリットだ。
ただし、使いこなす上では注意点もある。そもそも、ブランドのコンセプトやターゲットが明確化されていなければ、チャットボットに返答例をインプットできない。
「生成AIの返答をブラッシュアップするには、ブランドの立場を言語化し、事前情報として学習させなければなりません。この作業が、アウトプットされる内容のレベルを左右します。つまり、『自分たちが何者なのか』が今まで以上に問われるのです」