AIはまだ様子見? 気づけば時代に取り残されるかも
セッションのはじめに、藤井氏は「AIにまつわる用語の整理」と題し、混同されがちな三つの用語について、定義を解説した。
「一つ目は『AGI(汎用人工知能)』です。これは、アニメ作品に出てくるロボットのように、人間と同様の感性や思考回路を持つAIを指し、『人間の脳の再現』を目的としています。『人工知能』の研究という観点では、これが最終的な目標地点だと言えます。
二つ目は『Generative AI(生成AI)』で、これはものを作る・生み出す分野に特化したものです。大量のデータの中から言葉や絵をパターンで認識し、毎回新しいオリジナルのデータ・コンテンツとして生成するため、二度と同じものは生み出せないのも特徴の一つです。
そして、三つ目はテキストに特化した『LLM(大規模言語モデル)』です。2023年に話題となったChatGPTは、これを使った『ブラウザ版チャットサービス』のことを指しています」(藤井氏)
マイクロソフト創始者のビル・ゲイツ氏が「GUI(グラフィカルユーザインターフェース)を見た時以来の、人生2度目の衝撃」と言及したほどのGPTだが、既に世界ではあらゆるサービスに搭載されている。ここで藤井氏は、実例を二つ紹介した。
「まずは、英語学習サービスを提供する『Speak』です。AIの先生を相手にリアルタイムで英会話学習ができ、文法や発音の間違いを教えてくれます。人間の先生と違って予約の必要がなく、24時間いつでもどこでもレッスンが受けられる上、サービス提供者は人材雇用をしなくてもサービス拡大ができるため、教育業界にとってはかなりの脅威だといえるでしょう」
旅行会社Expediaが提供する、AIによる海外旅行のプランニングサービスも、藤井氏いわく「現地に住む人に聞くおすすめ情報とほぼ変わらない結果を提示し、クオリティーが高いもの」になっているとのこと。生成AIの登場により、既にサービスや提供価値が変わる商材も見受けられるが、「EC業界では、最新情報をキャッチアップし、既にアクションしている企業は意外と少ない」と藤井氏は強調。「早く取り組まないと時代に取り残される」と警鐘を鳴らした。
「これからのEC市場で大きなシェアを取っていくには、新たなテクノロジーであるAIの積極活用は不可避です」