TPOを踏まえたオフィス服 マンネリ脱却と新たな視点を得るためAI活用へ
any SiSは、オンワード樫山が展開するレディースアパレルブランドだ。「Lady to Wear, Ready for Feminine」をコンセプトに掲げ、20〜30代の働く女性に向けてフェミニンテイストをベースとしたアパレルを展開している。
そんなany SiSが、パーソナルスタイリングサービス「DROBE」と手を組んで2023年8月に発表した「AIが導き出した“最強オフィス服”」。any SiSの商品開発担当(MD)が、DROBEのAIデータを活用することで誕生した、いわば「AIと人の融合」による商品だ。
これらは、顧客の購買履歴をはじめ、提案アイテムに対する評価などを蓄積するDROBEのデータを基に、人気服の特徴をAIが抽出。導き出された要素に基づいて、any SiSのデザイナーがデザインを描き、形にする流れで進められた。
そもそも、any SiSがAIデータを活用しようと思ったきっかけはどこにあったのだろうか。奥村氏は、初の試みとなる「AIとの商品開発」に至った経緯を次のように説明する。
「これまで新商品の企画案を考える際には、デザイナーやMDが膨大な時間をかけて過去の売上分析や最新のトレンド分析などを人力で行い、未来を予測しながら形にしていました。
特にany SiSは、オフィス服の提案を行うブランドであるため、TPOに合ったデザインを施す必要があります。『AIからの提案』という新しい視点で服作りをすれば、デザインのマンネリ化を防げるのではないか。おもしろいアウトプットができるのではないかと感じ、チャレンジしてみることにしました。DROBE様のデータを採択したのは、同サービスのユーザーとany SiSのファンの親和性が高いから、という理由もあります」
今回販売したアイテムは、ブラウス2型、ワンピース・スカート・ニットアンサンブルが各1型の合計5型。1つの特集で打ち出すアイテム数としては多すぎず少なすぎず、といったところだが、奥村氏いわく「着回しのしやすさを考慮して、トータルコーディネートも組める型数にした」という。
AIに欲しいデータを抽出してもらうには、人間の「指示」が的確でなければならない。any SiSでは、「展開時期」「展開希望アイテム」といった条件や「通勤」「きれいめ」といったキーワードを提示。AIが抽出したデータは、「着丈」「ネック」「袖(丈)」「袖(デザイン)」「シルエット」など、部位や特徴ごとに要素を整理した上でランク付け、可視化がされ、それを参考にミーティングで方向性を決めていったという。
「慣れるまでは、思ったものとは違うデータが上がってくることもあり、試行錯誤したのも事実です。知りたい情報が抽出されるように、メンバーと話し合いながらAIへの依頼内容を調整するなどして、方向性が見えてきました」