接客するようにメッセージ発信 EC専売化粧品・高価格帯アパレルのアプリ活用
神田氏が最初の事例として紹介したのは、自然派のスキンケア商品や化粧品を展開するブランド「草花木果」を展開する株式会社キナリの公式アプリだ。
同アプリでは、ブランドが大切にしている“想い”を写真や文章で丁寧に伝えている。ECで事業展開しており、接客の機会がないことから、アプリでブランドの世界観を伝えきることに注力した。中でも人気コンテンツとなっているのが、「使ってみようかな」と思えるような内容を意識し、スタッフが実際に商品を使った感想を紹介する「告白シリーズ」だ。
「こうしたコンテンツを強化した結果、アプリ経由の購入リピート率は80%を記録しています。これはウェブサイトなど他のチャネルと比べると、約2倍の数値です」
次に神田氏が紹介したのは、株式会社三陽商会が展開するアパレルブランド「Paul Stuart」の公式アプリだ。
「Paul Stuartは、同社の他ブランドと比べて価格帯が高いため、顧客との接点が途切れてしまうことを課題としていました。来店頻度がそこまで高くない顧客との接触回数を増やすために自社アプリの提供を開始。『ファンはどのような情報が欲しいのか』を分析した上でのコンテンツ設計や、アプリ利用者を店舗で行う限定イベントに招待するなど、特別感を高めた施策を実施しています」
ファンビジネスは「つながり」作りが鍵に
アプリの役割は物販だけにとどまらない。吉本興業株式会社が提供するタレントとファンをつなぐエンターテインメント型アプリ「FANY」も、Yappliを使って構築されたものだ。
同アプリは、劇場公演やイベントのチケットを販売するだけでなく、様々なコンテンツを配信している。推しの芸人の最新情報を入手できるフォロー機能や、フェス会場でAR(拡張現実)機能を使った企画を提供するなど、オンラインとオフラインを融合した取り組みも実施。アプリ経由のチケット売上は今では20%を占めており、今後はアプリから取得できるデータ活用したサービス展開にも注力する予定だという。
熱狂的なファンを多く有するプロスポーツチームも、さらなるファン獲得を目指してアプリ活用を進めている。神田氏は、鹿島アントラーズの事例を紹介した。
鹿島アントラーズは、ファンに発信する情報が様々なメディアに分散し、「点」になってしまっていることが課題だった。そこで、公式アプリによって情報発信を一本化。バラバラだった情報を「線」でつなぐ施策を実施した。
「また、ファンの声を積極的に取り入れて、コンテンツや施策に反映している点も特徴です。試合直後に選手の声が聞けるインタビュー企画も、こうした意見から実現して人気コンテンツになっています」
その結果、アプリをダウンロードしたファンの約60%が継続的にアプリを活用。神田氏は「試合結果の通知やプレゼント・投票企画の実施など、アプリを開くきっかけ作りがうまくいっている事例」と説明した。