近年はBtoB、HR領域にも広がるアプリ活用
専門知識がなくても、最短1ヵ月で自社アプリをリリースできるアプリプラットフォーム「Yappli」は、今や様々な業種のアプリ開発・運用・分析をサポートしている。2013年のサービス開始から10年で、800以上の企業・ブランドのアプリ導入を支援してきたという。
導入実績としては、小売やアパレル、飲食、食品メーカーなど消費者との関係構築・強化を試みる企業・ブランドのほか、取引先企業とのコミュニケーション深化を目指すBtoB企業にも需要は拡大している。また、「近年は大学による生徒手帳のDX、社内の研修資料や情報共有を目的とする活用、インバウンド観光客の戻りから空港内ショッピングモールへの導入実績などもある」と神田氏は語る。
需要拡大とともにヤプリが提供するサービスも多様化し、2021年にはノーコードでCRMを実現する「Yappli CRM」をリリースしている。また、2023年5月には自社アプリ内でキャンペーン・広告枠設置を実現するリテールメディアサービス「Yappli for Retail App Ads」の提供を開始し、小売・流通の収益最大化を支援。同年8月には組織エンゲージメント向上を目的とする「Yappli UNITE」も開始し、HR Tech領域にも進出している。
進化する消費者には「チャネルの使い分け」が大事に
神田氏は、アプリ活用の重要性を伝える前にまず、「自社アプリ」の現状を解説。コロナ禍を契機にECアプリの需要は高まり、2020年と2022年のセッション数を比較すると29%も増加している。その背景には、状況に応じて「デジタル(EC)」と「リアル(実店舗)」を使い分けられるようになった消費者の変化があると考えられる。
「消費者のリテラシーは高まっています。それに合わせて、企業側もデジタル環境を整備する必要があります」
デジタル施策といっても、検索エンジンやウェブサイト、SNS、自社アプリなど今の時代には様々なチャネルが存在する。それぞれ訴求できるターゲット層は異なるため、どれか一つを実施するのではなく、「使い分け」が必要だ。検索エンジンや広告を新規顧客獲得の入り口とし、SNSでライトなコミュニケーションを重ねてアプリに誘導し、コアファンになってもらう。こうした段階を追って関係性を深めていくような施策が求められる。
「知らない企業やブランドのアプリをいきなりダウンロードする人はいません。ウェブサイトやメルマガ、公式SNSからアプリへの動線を作る施策が増えています」
アプリ施策が有効な理由は、ブランドとの接触回数を増やし、親近感を高められる点にある。また、自社の商品やブランドの世界観を表現することで伝えたい情報やメッセージが届きやすくなる点も特徴だ。
「アプリでファンを増やしている企業は、実際にどのような取り組みをしているのか。本セッションでは、皆さんが気になるアプリ活用の成功事例をご紹介します」
接客するようにメッセージ発信 EC専売化粧品・高価格帯アパレルのアプリ活用
神田氏が最初の事例として紹介したのは、自然派のスキンケア商品や化粧品を展開するブランド「草花木果」を展開する株式会社キナリの公式アプリだ。
同アプリでは、ブランドが大切にしている“想い”を写真や文章で丁寧に伝えている。ECで事業展開しており、接客の機会がないことから、アプリでブランドの世界観を伝えきることに注力した。中でも人気コンテンツとなっているのが、「使ってみようかな」と思えるような内容を意識し、スタッフが実際に商品を使った感想を紹介する「告白シリーズ」だ。
「こうしたコンテンツを強化した結果、アプリ経由の購入リピート率は80%を記録しています。これはウェブサイトなど他のチャネルと比べると、約2倍の数値です」
次に神田氏が紹介したのは、株式会社三陽商会が展開するアパレルブランド「Paul Stuart」の公式アプリだ。
「Paul Stuartは、同社の他ブランドと比べて価格帯が高いため、顧客との接点が途切れてしまうことを課題としていました。来店頻度がそこまで高くない顧客との接触回数を増やすために自社アプリの提供を開始。『ファンはどのような情報が欲しいのか』を分析した上でのコンテンツ設計や、アプリ利用者を店舗で行う限定イベントに招待するなど、特別感を高めた施策を実施しています」
ファンビジネスは「つながり」作りが鍵に
アプリの役割は物販だけにとどまらない。吉本興業株式会社が提供するタレントとファンをつなぐエンターテインメント型アプリ「FANY」も、Yappliを使って構築されたものだ。
同アプリは、劇場公演やイベントのチケットを販売するだけでなく、様々なコンテンツを配信している。推しの芸人の最新情報を入手できるフォロー機能や、フェス会場でAR(拡張現実)機能を使った企画を提供するなど、オンラインとオフラインを融合した取り組みも実施。アプリ経由のチケット売上は今では20%を占めており、今後はアプリから取得できるデータ活用したサービス展開にも注力する予定だという。
熱狂的なファンを多く有するプロスポーツチームも、さらなるファン獲得を目指してアプリ活用を進めている。神田氏は、鹿島アントラーズの事例を紹介した。
鹿島アントラーズは、ファンに発信する情報が様々なメディアに分散し、「点」になってしまっていることが課題だった。そこで、公式アプリによって情報発信を一本化。バラバラだった情報を「線」でつなぐ施策を実施した。
「また、ファンの声を積極的に取り入れて、コンテンツや施策に反映している点も特徴です。試合直後に選手の声が聞けるインタビュー企画も、こうした意見から実現して人気コンテンツになっています」
その結果、アプリをダウンロードしたファンの約60%が継続的にアプリを活用。神田氏は「試合結果の通知やプレゼント・投票企画の実施など、アプリを開くきっかけ作りがうまくいっている事例」と説明した。
コンテンツ内製化・素早いPDCAで数字につなげる洋菓子EC・アパレル事例
洋菓子ブランド「LeTAO(ルタオ)」を展開する株式会社ケイシイシイは、ルタオの魅力をより伝えるためにアプリプラットフォームをYappliに移行した事例だ。
「新アプリでは、地元である北海道・小樽の景色の写真や観光情報を届けるコンテンツ作りに注力。コンテンツは内製し、地元愛あふれるアプリを目指した結果、1ヵ月の平均購入者数が旧アプリ時代の8倍、アプリ経由売上は2倍を記録しています」
Yappliならではの「更新のしやすさ」を活かして成果を上げているのは、アパレルブランドの「tutuanna(チュチュアンナ)」だ。管理画面で即座にコンテンツの差し替えができることから、アプリ運用チームが一丸となってPDCAを回し、顧客視点での改善や新たな施策の即時反映を実施している。1日に複数回コンテンツを変えることも珍しくないそうだ。
「細かな磨き込みは数字にもつながっており、アプリ経由の売上はEC全体の50%以上を占めています。また、LTVも年間で110%伸長しました」
当事者意識をもってコンテンツ・数字作り、施策展開ができるYappli
同事例からもわかるように、Yappliの強みは直感的な操作でスピード感のあるアプリ開発が実現できる点にある。管理画面上で必要な機能をドラッグアンドドロップすると、スマートフォンを模した画面上に該当機能がリアルタイムに反映。レイアウトを確認しながらコンテンツや機能追加が可能となっている。
また、管理画面から閲覧できるダッシュボードでは、ダウンロード数やアクティブユーザー数、コンテンツごとの閲覧数、プッシュ通知の開封率などを表示。アプリ運用者が自ら管理画面で数字とともに施策を振り返り、改善できるのも特徴だ。
「直近では、Yappli CRMの導入事例も増えています。アプリ機能と顧客データを組み合わせることで、顧客情報や会員ランク・ポイントの管理、アンケート実施やメール配信などといったコミュニケーションを適切なタイミングで実施できます」
神田氏は最後に、こうしたアプリ活用の活性化を支えるヤプリのカスタマーサクセス体制について紹介してセッションを締めくくった。
「当社は60人体制のカスタマーサクセス本部を設置してクライアント企業のサポートを行っています。成功体験を共有するコミュニティー施策も実施しているため、アプリの知見がなくても安心して始められます。ご興味がある方はぜひご相談ください」