日本の消費者は求める顧客体験のレベルが違う
フランス・パリのジュエリーブランド「GEMMYO」を知っているだろうか。2011年に誕生した同ブランドは、30~45歳、かつオンラインとオフラインの両方での購入に慣れている新興富裕層をメインターゲットに、高級ジュエリーを展開している。その成長ぶりは、Google検索において「カルティエ」や「ティファニー」などの老舗高級ジュエリーブランドと肩を並べるといわれるほどだ。
オンラインで販売を開始し、2015年にはパリのサンジェルマン・デ・プレ地区に1号店を開店。現在はジュネーブやボルドーをはじめ、ヨーロッパを中心に8店舗を構える。平均購入単価は約30万円と高額だが、売上の約50%はオンラインから。EC化率が高い点も、同ブランドの特徴といえる。
GEMMYOは2023年10月、日本への進出を発表した。同年12月には、オークラ東京でのショーケース「La Résidence Gemmyo(ラ・レジデンス・ジェミオ)」の開催が決定している。同ブランドにとって、ヨーロッパ以外への展開は日本が初めて。2024年11月頃を目標に、表参道への実店舗出店も視野に入れ準備を進めている。
日本進出の理由について、創業者の一人であるポリーヌ・レニョー氏はこう語った。
「論理的な理由も挙げられますが、大きな理由は、私自身と夫であり共同創業者であるシャリフ・デブスが日本を好きであることです。また、シャリフの弟が日本で10年ほど生活した経験があり、私たちの日本への理解も深いと思っています」
日本進出を進める中で感じた、日本とフランスの消費者の違いとして、ポリーヌ氏は「求める顧客体験のレベル」を挙げる。GEMMYOは5ヵ月ほど前にパッケージを大きく変更した。新パッケージの制作には、約2年がかけられた。
「フランスであれば『この程度で問題ない』というサービスレベルが、日本の消費者には雑だと捉えられる可能性があります。リニューアル前のパッケージでは、今回の日本進出は難しかったでしょう」
一方、日本人とフランス人に好まれるジュエリーのデザインは似ているという。GEMMYOには、宝石が小さく全体的にシンプルなジュエリーが多い。ポリーヌ氏は、「日本の女性にGEMMYOのジュエリーを紹介した際、フランスの女性と同様に好感を得られた。日本でも受け入れられる安心感をもっている」と自信を覗かせた。
日本においてGEMMYOは、まだまだ認知を獲得していかなければならない段階にいる。同ブランドは今後、イベントの開催やInstagramなどのSNSおよびGoogle広告、インフルエンサーを活用したマーケティング施策など、日本の消費者に多角的にアプローチしていく考えだ。また、映画館における広告施策も計画している。
「映画館広告は、実際にフランスでも行っています。広告がありふれている今、人々の注目を集めるのは容易ではありません。映画館であれば、消費者に大きな画面で集中して見てもらえますし、1分程度の長めの広告を流すことも可能です。GEMMYOは、『どこに広告を出稿するのか』について、常に革新的でありたいのです」