前回の記事はこちら
何がいつヒットするかわからない時代に突入
コロナ禍に在宅時間が長くなったことを契機に、全世界で動画配信サービスの需要と利用が高まりました。世界の動画配信・音楽配信・電子書籍市場は、2021年に合計14兆1,452億円(前年比21.7%増)、動画配信市場は9兆9,310億円(前年比24.5%増)と大幅に成長しています(総務省「令和4年版 情報通信白書」より)。
配信サービスの充実化により、アニメや音楽などのコンテンツが世界で時差なく楽しまれるようになっています。動画配信サービスは、現地にローカライズした字幕対応で視聴者層の広がりを見せており、日本のコンテンツのファンはこれまで以上に世界中に増えています。
なお、日本のアニメ・漫画コンテンツの人気は、動画配信サービスだけがもたらしたものではありません。近年は、『THE FIRST SLAM DUNK』『すずめの戸締まり』など、日本発のアニメ作品が世界で公開されたり、『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』が任天堂とイルミネーションによって共同制作されたりと、劇場公開作品の勢いもすさまじい状況です。
また、音楽の分野ではストリーミングサービス「Spotify」にて、アニメやゲーム、ボカロ、VTuberといった日本独自のポップカルチャーにフォーカスしたプレイリスト「Gacha Pop」が公開され、話題となりました。国境や時代を超越したコンテンツへのアクセスをかなえる配信サービスにより、今やいつ何がヒットするかわからない時代になっているともいえます。
動画配信サービス興隆で増えた全世界からのグッズ需要
こうした動きは、関連グッズ需要の伸びにも寄与しており、アーティストやアニメキャラクターなどのEC構築を多数手掛けるBEENOS Entertainmentにも、海外進出を希望する事業者からの依頼が増えています。裏を返せば、配信サービスにおけるストリーミング数や映画の興行収入などといったコンテンツ需要の伸びに対し、グッズなどの「モノ需要」への対応がまだ十分ではないということです。
アニメ放映や映画公開に合わせた国内向けの販促・グッズ展開は、同一ジャンル・作者の過去作品の反響や事前の評判を踏まえて当たり前のように行われていますが、定番作品や人気作品ではない新規作品が従来型の方法で海外需要も見越したグッズ展開をするのは、リスキーです。
また、動画コンテンツと合わさった「バズ」の発生や、ストーリー展開などの理由から特定のキャラクター人気が急速に高まるなど、突発的かつ予測不能なグッズ需要の跳ね上がりも現代の特徴です。インターネットにより、グローバルと容易につながれるがゆえの需要の多様化も事業者にとってはうれしい反面、頭を悩ませる問題といえるでしょう。
突発的な需要に対して反響を見てからグッズ製作をしても、従来型の方法では注文から商品送付までに数ヵ月を要します。すると、生産体制が整った頃にはコンテンツやキャラクターへの熱が冷めてしまい、販売機会を逃したり、仮に販売しても大量の不良在庫を抱えたりといった事態が起きてしまいます。ファンの期待に応え、こうした損失をなくすには、素早い商品展開が可能な体制構築が欠かせません。