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ECzine Day 2024 June

2024年6月6日(木)10:00~17:40(予定)

濃いつながりで盛り上がる エンタメDX・EC最新事情

「欲しいから買う」だけじゃない 推し活をするファンの購買行動からエンタメグッズの売り方を考える

 エンターテインメント(エンタメ)業界の中でも、コンサートやライブなどの「音楽イベント市場」は、新型コロナウイルス感染拡大の打撃を受け、2020年に著しく縮小しましたが、現在は回復傾向にあります。エンタメDXは、特に音楽イベントにおける物販やECでその流れが顕著です。当連載では、推し活文化の盛り上がりや強いコミュニティ創出など、注目すべきトピックも多いエンタメ業界の最新事情を解説。第2回は、「エンタメグッズのEC展開」について解説します。

推し活に欠かせないグッズ 顧客・売り方の特徴は?

 エンタメコンテンツを楽しむファンによって行われる活動=「推し活」は、近年広く一般に知られるようになってきました。インターネットの発達とともに、推し活はオンライン上のあらゆる場面に広がっており、特にSNSはファン同士による写真投稿や情報のシェア・拡散など、ファンコミュニティとしても重要な機能を果たしています。

 こうした推し活を盛り上げる一端を担っているのが、グッズです。グッズは様々なエンタメジャンルで販売されており、SNS上のファンコミュニティでも商品販売情報や購入報告、交換依頼など活発な情報発信が行われています。

 エンタメグッズは、一般商品の顧客と比べて消費に積極的な顧客が多く、購買の山を作りやすい点が特徴です。ECを上手に活用すれば、ファンコミュニティの活性化にもつながります。今回は、エンタメグッズ・ECの売れ行き動向や盛り上がりを見せる売り場作りの秘訣について、ファンコミュニティの特徴にも触れながら解説いたします。

定番ものだけでなく、ファン心理を捉えた展開が鍵に

 推し活に欠かせないグッズの代表格は、ライブやコンサートで使用・着用するペンライトやTシャツですが、近年は実用品に限定されず、コレクティブルなアイテムが増えていることも特徴です。

 また、アパレル用品を扱う場合、通常のECであれば季節を踏まえた商材ラインアップや、季節ごとに新モデルを発表するといったように、「時間軸」を重視した施策展開が必要ですが、エンタメジャンルではそこまでの縛りが存在しません。もちろん、ファンのニーズをくんで季節性を取り入れた商品を販売したり、需要をデザインに反映したりといった工夫は必要ですが、冬でもTシャツが売れるのはエンタメグッズ特有の動きだといえるでしょう。

 いわゆる推し活をする人々は購入意欲が高く、コンテンツへの支持表明としてグッズを買うケースもあるため、ECサイトのCVRが通常のECサイトよりも高くなりやすい点も特徴的です。一般商材であれば、商品の比較検討・購入時に機能や価格が重視されますが、エンタメグッズの場合はそれらよりもコンテンツやキャラクターの流行・人気によって売上が大きく左右されます。同型の商品でも印刷されているコンテンツやキャラクター、メンバーの人気度や組み合わせによって、売上が数十倍から数百倍開くこともあるため、商品製造コントロールが難しい点にも注意しなければなりません。

 ライブ・コンサート・イベント時に使用するペンライトやTシャツといった代表的なグッズだけでなく、近年はSNSでの写真投稿などで盛り上がりを見せるアクリルスタンドやアクリルキーホルダーも人気です。また、直近では既存のスマートフォンケースをショルダータイプにする際に活用するフォンタブ(スマートフォン本体とケースの間に挟み込むパーツ)の売れ行きも好調となっています。

 エンタメグッズは、基本的にコレクション要素をもった商品が中心となっており、同一商品を1人が複数個購入するケースも珍しくありません。また、返品率が低い点も特徴です。BEENOS Entertainmentが提供するEC構築サービス「Groobee」で運営している、あるアーティストのECサイトでは、同一商品を3回の期間に分けて販売したところ、すべての回で商品購入する顧客も多く見られました。購入意欲の高さがうかがえる例といえるでしょう。

 また、SNSの興隆は推し活にも大きな影響を与えています。SNS内でファンコミュニティが形成され、ファン同士の交流や推し活に関する情報交換が日々行われていることもあり、エンタメ関連企業は日々SNS上での発信力・拡散力の最大化に努め、様々な施策を実施しています。

 こうしたエンタメコンテンツ特有の購買動向とファン心理をつかんだ特徴的なグッズの一つがアクリルスタンドです。推し活スポットを訪れたり、ファン同士で遊んだりする際にアクリルスタンドを連れて写真を撮影し、「推しと一緒の思い出」を作れれば、自然とSNS投稿・拡散にもつながります。バリエーションの多いグッズは、収集癖のあるファンの心をくすぐります。ただ「売上を作る」だけでなく、ファンコミュニティの活性化やファン心理を理解した展開を視野に入れることが、より購買行動を活発にする秘策ともいえます。

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この記事の著者

BEENOS Entertainment株式会社 代表取締役社長 玉谷芳和(タマヤ ヨシカズ)

2002年よりベンチャー・リンクにて、多岐にわたるコンサルティング業務に従事した後、2008年に当社に入社し、対中国向けBtoBビジネスの立ち上げに参画。2012年に国内有名アイドルグループのECサイト構築・運営受託や、D2C商材を開発・販売するモノセンス株式会社を設立。同社取締役として事業の立ち上げを行い、ライセンスビジネス、エンターテインメント領域にて事業拡大に貢献。2020年よりエンターテインメント業...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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