レイアウトや導線の工夫で顧客行動が変化
活用事例(1):商品アップデート情報を瞬時に表示、クリック率が15%に
三陽商会が行った一つ目の施策が、サイトレイアウトの変更だ。具体的には、ブランドサイトのファーストビューに、商品のアップデート情報を追加した。これは、KARTEでn1分析を行った際に見えてきた、毎日のように公式サイトへ来訪するロイヤルユーザーの行動を参考にしたものだ。
「訪問頻度の高いお客様は、商品一覧ページだけをごく短時間で閲覧していることがわかりました。そこで、新商品の入荷をチェックしているのではないかと仮説を立てたのです。元々、オンラインストアでは『ニュースページ』で期間限定ショップやキャンペーンに関する情報は発信していたのですが、商品のアップデート情報を網羅しているコンテンツはありませんでした。商品のアップデート情報が確認できるコンテンツを設けることで、頻繁に公式サイトへ訪れるお客様のチェックポイントとし、まだその習慣がないお客様には、入荷情報などが一目でわかるようにしました」(黒澤氏)
当初、黒澤氏らブランド運営陣は、KARTEの埋め込み機能を用いてこの施策を実行し始めていた。しかし、情報の読み込みにタイムラグが発生していたため、KARTE Blocksの活用に切り替え、スムーズな反映を実現した。
「KARTEの埋め込み機能ではクリック率が7%でしたが、KARTE Blocksを活用したことで15%と倍以上になりました。また、公式サイトの読み込みとほぼ同等のスピードで商品のアップデート情報が表示されるようになり、ユーザビリティの向上も実感しています」(黒澤氏)
活用事例(2):オンラインストアの導線をバナーで追加し遷移率10%向上
二つ目の施策では、各ブランドサイトのファーストビューに、視認性が高いオンラインストアへの導線を設置した。この施策では、KARTE Blocksでも利用できる機能の一つ、顧客が購買に至るまでの画面を動画で閲覧できる「KARTE Live」が用いられた。KARTE Liveによるn1分析の結果、公式サイトを訪問した顧客の行動が、ブランド運営側の想定とは異なっていることが明らかとなった。
「想定していた顧客行動は、ハンバーガーメニューからオンラインストアに遷移する流れでしたが、実際には、各ブランドサイトのかなり下部にある『今週のトップ10』から商品詳細ページを閲覧し、オンラインストアの商品一覧ページへ遷移していることがわかりました。そこで、ブランドサイトのトップページにバナー形式でオンラインストアへの導線を設置すると遷移率が8.5%、一つ目の施策を組み合わせることで10.3%向上しました」(黒澤氏)
2023年9月20日、CRESTBRIDGEの公式サイトは再びリニューアルされた。新たな公式サイトには、これまでのKARTE Blocksの活用で得られた知見から必要な要素を実装しているという。
「いらない要素」を排除し気持ちの良い体験へ
続いてプレイドの中井氏が、黒澤氏にいくつかの質問を投げかけ、三陽商会の取り組みを掘り下げていった。
今後は、「データ統合・利活用プラットフォーム『KARTE Datahub』も活用し、パーソナルな接客を実現していきたい」と語る黒澤氏。「データをどう活用するのか、パーソナライズされた接客を行う上で何に気をつけているのか」という中井氏の問いに、こう答えた。
「当社が全国に保有する実店舗も、ブランドにとっての強みです。実店舗とオンラインストアの顧客データを掛け合わせて、正しくお客様を理解したいと思っています。また、接客を行う上では、事業者目線になり過ぎないようにしています。お客様目線でコミュニケーションを取っていきたいです」(黒澤氏)
三陽商会は、n1分析をもとに立てた仮説から効果的な施策を導き出した。一方、n1分析が重要だと認識していても、全体データと併せてどう見れば良いかわからない読者もいるだろう。そこで中井氏は、さらに「黒澤氏自身は、n1データと全体の顧客データをどのように使い分けているか」と質問した。
「当社が扱う商材は、お客様の好みが購入に影響します。そのため、n1分析に必要な定性データは非常に重要です。サイト内の日常的な健康診断として全体データを活用し、いつもと違う動きを見つけたときにn1データで原因を確認しています」(黒澤氏)
そして黒澤氏は、「コピーライター糸井重里氏が作った西武百貨店のキャッチコピー『ほしいものが、ほしいわ。』が座右の銘」だと述べ、今後目指すオンラインストアについても説明した。
「『ほしいものがほしい』は、『いらないものはいらない』という意味でもあると思います。いらないものには、オンラインストア上の無駄な挙動も含まれるでしょう。お客様にとって邪魔になる要素をできる限り排除して、気持ち良く買い物ができる場を作っていきたいです」(黒澤氏)