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ECzine Day 2024 Autumn

2024年8月27日(火)10:00~19:15

次なる顧客体験へ 大手企業の目線

ビジネスの見つめなおしに「痛み」は必要だった フェリシモサイトリニューアルPJメンバーに聞くこだわり

 2023年3月に、大規模なサイトリニューアルを実施した株式会社フェリシモ。長年フルスクラッチでEC運営をしていたが、今回のリニューアルを機にパッケージ型のシステムを導入。定期便を軸とした独自のビジネススタイルは維持しながらも、UI/UXやデザインの刷新を実現している。今回は、本プロジェクト開始のきっかけや、リリースまでの紆余曲折について、プロジェクトの主要メンバーであるフェリシモ CXD部 副部長 西本宗平氏、IT推進部 部長 山下直也氏、WEBコンテンツ制作・編集グループリーダー 永井友理氏に話を聞いた。本記事は、2記事にわたってお届けする後編となる。

悩んだときの最終判断は「お客さまの行動」から

──フェリシモのウェブサイトリニューアルについて、後編ではよりプロジェクト進行の細部までお聞きしたいと思っています。要件定義のプロセスで特に意識したことは何でしょうか。

西本(プロジェクトリーダー) 僕は「システムを変えても、人が変わらなかったらリニューアルをする意味がない」と思っていました。そのため、「今までこうだったから」という意見にあえて疑問を呈するようにし、既存の機能は「あって当たり前」と思わないで進めるよう意識しました。

 もちろん議論を重ねた結果、運用負荷軽減の観点からカスタマイズをして残した既存機能も存在します。しかし、これぐらい抜本的に思考をリセットしなくては、「自社ビジネスの見つめなおし」は到底実現できないと考えていました。

株式会社フェリシモ CXD部 副部長 西本宗平氏

山下(開発担当) 私は、リクエストされたカスタマイズ要件に対して、「これは事業にどう貢献するのか」と議論するプロセスを設けようと意識していました。

 話し合いは時間を要するのですが、挙がってきた要望すべてに対応すると膨大なカスタマイズ費用がかかります。すると、システムを変える意味がなくなってしまいますし、実際話を聞いてみると過去の踏襲が目的であり、本来のやりたいことではないケースも散見しました。「声の大きさだけに左右されない」という点は、特に重視しましたね。こうしたものは削ぎ落としつつ、バックオフィス業務の実運用に支障があるにも関わらず見逃されている要件については、「本当になくしていいの?」「なくした場合の業務運用の代替方法は?」と考えなおすきっかけを与えていました。

西本(プロジェクトリーダー) 僕はマーケティング的なKPIも追う立場なので、「その機能を入れたら顧客体験が向上し、結果的にビジネスの成長にもつながるのか」といったビジネス貢献の視点も判断基準の一つとしていました。

 たとえば、新たな運用に慣れるまで一時的に不便さを感じる部署があったとしても、それがゆくゆくのビジネス成長につながるのであれば「自社ビジネスの見つめなおし」には必要な痛みといえます。レスポンシブ対応も、これまでPC・スマートフォンで訴求文言を変えていたブランドにとっては「表現の幅が狭まる」と感じるかもしれませんが、浮いた工数で新たなクリエイティブ制作ができますし、「スマートフォンでアクセスするお客さまが増えている=それに合わせた見せ方にすればより多くのコミュニケーションや行動が生まれる」と考えられます。対応する・しないの最終判断は、お客さまの行動に立ち返るようにしていました。

永井(デザイン担当) 西本のやり方にはもちろん賛成なのですが、たとえ考え方やそこから得られる成果としては正しくても、リニューアル後に現場が混乱するとフェリシモのビジネスに影響が及んでしまいます。私はそれを避けるべく、サイトマネージャーや関係する部署との調整役として動くよう意識していました。

 また、プロジェクト立ち上げ初期からチームメンバーやサイトマネージャーに「今までの機能を当たり前と思わない」「改めて本当に必要な機能か考えなおそう」と呼びかけていたのですが、こうして先手を打ったのは非常に効果的だったと思います。みんなで「再確認する」という共通認識を持てたので、デザインやサイト運用においては削ぎ落とす議論が進みました。

 フェリシモは、お客さまの声をとても大切にしている会社です。そのため、「誤解を生まないようにこの文言も必要」「要望に応えてこういう見せ方もしよう」と増やしすぎてしまった要素も存在しました。これらを一旦リセットしてシンプルにし、その上で「フェリシモとして欠かせないものを残す」として、今の形に落ち着いています。実際にリリースしてみて「やはり必要だった」という部分も見えているので、そのあたりは追加しようと進めているところです。

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この記事の著者

景山 真理(カゲヤマ マリ)

フリーランスのライター。EC店舗、タウン情報誌制作会社、マーケティング支援企業などへの勤務経験を経て、ウェブメディアや雑誌をはじめとする紙媒体のライティングの仕事をしています。専門領域はデジタルマーケティング、コンテンツマーケティング、ECのセールスメルマガ、仕事・働きかた、デジタルトランスフォーメーションです。 ウェブ●Mari Kageyama Writing Works

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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