既存人材を育てればブランドの横展開にも効く
Tokyo Apartment StoreのECサイト構築にあたってインクは、「コーディングとは何か」といった基礎的な知識のインプットから始めた。
「コーディングが何かわかれば、逆にノーコードとは何かがわかります。Shopifyはノーコードで活用できる機能が多いので、自社内でどこまでできるのか全体像が把握しやすいのです。その上で、応用としてUXのノウハウも提供しながら、ECサイトのオープンまで完了しました。
それと並行して、原価や物流費、広告費などのコストシミュレーションも重要なポイントでした。シミュレーションした上で、サイト構築や商品登録を行う必要があるからです。広告費に毎月いくら投資できるのか、売上目標を達成するにはどの程度のコンバージョン数が必要かなど、『目標の軸』をビタミンシーエムと伴走しながら設定しました」(編田氏)
軸が定まれば、それに対して打つべき施策を検討できる。さらに施策の実行後は、効果測定、分析、次なる施策の実行へとPDCAサイクルを回していく。EC運営における一連の流れを経験しながら、ビタミンシーエムの社内スタッフが徐々に知識を身に付けていった。
岡安氏は「インクに支援を依頼したことでブランドに合ったEC運営ができている」と話す。
「ウェブ上では、『ニュースレターをやるべき』『Instagramで顧客接点を作るべき』『LINEが顧客獲得に一番良い方法』など、様々な情報がありました。それらの施策をすべて実行したかったのですが、リソースが足りず、どれもアカウントはあるけれど深く取り組めていない状況でした。しかしインクから、Tokyo Apartment Storeの扱う商品のビジュアルが活かせるInstagramを基点に、顧客と密な関係を構築するロイヤルカスタマー戦略を講じるのはどうかと提案されたのです。
提案を参考にInstagramを利用したライブ配信や限定キャンペーンなどを行うと、そこから商品を購入してくれる顧客が現れました。現在は、ECサイトだけでなく実店舗にも、『Instagramを見て来ました』という顧客が増えています」(岡安氏)
ECサイトの売上だけでなく、実店舗への送客という副次的な効果も生まれているのだ。ビタミンシーエムのようにリソースが限られる場合は、その中で伸ばせそうな施策を絞って実行することで、着実な成長が見込める。
Tokyo Apartment StoreのECサイト立ち上げからインクの支援を受け始めたビタミンシーエムだが、他にも「&VINTAGE」「SUPER VINTAGE」といったブランドを、実店舗とECサイトの両軸で運営している。この多店舗展開にも、インクの支援が活きている。
「当社では作業ごとに担当が分かれていますが、ECを通じた売上や施策などを共有するミーティングは社内スタッフ全員で行っています。そのため、私や他の担当者が得た知識や行った施策などを、社内スタッフ全員が同じレベルで理解できている状態です」(岡安氏)
「リース業も含めて多店舗展開しているので、社内では異動もあります。誰かが異動したから業務が滞るという状態は、避けなければなりません。そのため、1人ひとりのレベルアップは当然ですが、会社全体でノウハウを共有することで、全体最適できているのだと思います」(鵜飼氏)
一度、EC事業のインハウス化を行えば、その後も効率的にブランドを横展開できる。将来的な事業成長を踏まえると、半永久的に外部へ業務を委託するのではなく、自走を前提にノウハウを取り入れるほうが、メリットが大きいだろう。