ソーシャルで生まれる定性データ 分析して打ち手につなげるには
CRMというと、既存顧客に紙のDMやフォローメール、LINEでのメッセージを配信して長期的な関係を築き、LTV向上につなげていく印象が強い。最近ではそこにソーシャルメディアが登場し、エンゲージメントが重要な指標であるとされている。ECにおいても、関係構築のためにソーシャルメディアは欠かせない存在となっている。従来のテクニック的な手法論に限定せず、CRMが顧客と良好な関係を築くことだという原点に立ち帰り、そのうえで今回の特集テーマであるOMOとソーシャルコマースを絡めてCRMを語ってもらうことにした。
「CRMの取り組みが始まった頃は、アナログメディアの施策が中心でしたから、成果の計測には苦労していた。それがデジタル化によって反応を数値化して計測しやすくなっていました。ところがそこにソーシャルが入ってきたことで、企業側が当初設計した以外の接点でユーザー間での発信が生まれたり、コンバージョンのポイントもより複雑になっています。そして、D2Cに取り組まれているメーカー企業様を中心に、定性的な情報に含まれる顧客のインサイトを非常に重視していらっしゃいます。ソーシャルによって生まれた数値化しにくく、複雑な顧客インサイトをいかにとらえるかが課題となっています」
わかりやすい例として、高木さんはライブコマースをあげた。SNSを中心としたデジタルツールを用いてはいるが、究極的には人と人がつながるもの。ライブコマースを発信する人、視聴する人、それぞれの人となりを含めたサービスの良し悪しや返ってくる反応はさまざまで、定量的なデータで誰にでもわかりやすく示すことは困難を極める。
「いいね!スタンプの数や投げ銭などは数値化できますが、ライブコマースで生まれるものはそれだけではありませんよね。クチコミがいかに増えたかはまだ数値化できるかもしれませんが、それよりもライブコマースを視聴した感想などをフィードバックとしてとらえたいとのニーズがあります。そしてそれを可視化して組織全体に共有するだけでなく、次の打ち手に活かしたいというところまで来ています」
高木さんが所属するプラスアルファ・コンサルティングでは、CRM/MAツールのカスタマーリングスをマーケティング・オートメーションが流行する以前から提供している。顧客データを統合するCDPの基盤を持ち、多彩な分析機能を標準装備。分析からセグメント、アクションまでワンストップで行えるのが特徴だが、ソーシャルメディアで生まれる定性的な情報については、CRM/MAツールではすべてを網羅することは難しい。
そこで登場するのがテキストマイニングツールだ。膨大なテキストデータを単語で区切り、関連性や出現頻度などから、顧客のインサイトを掘り出す(マイニング)のを支援するツールである。会話のログデータが残るコールセンター等で用いられていたが、ソーシャルメディアが登場しそこで語られる言葉をマーケティングに活用しようとニーズが高まり、再注目された。プラスアルファ・コンサルティングでは「見える化エンジン」というツールを提供しており、CRM/MAツールと併用される機会が増えていると言う。
「購買データを分析してフォローメールを送るといった、わかりやすい活用事例は見えていませんが、複数の企業様から共通する内容のご相談をいただいており、ニーズを感じています。データの蓄積自体はできているのですが、それを分析して打ち手につなげるところまでは至っていないのが課題とのことで、まだ模索中ではありますが解決につなげていきたいと考えています」