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季刊ECzine vol.23定点観測

ソーシャルコマースこそ ファンに響くきめ細やかな物流を

 EC事業者がおさえておきたい13のテクノロジー関連トピックスの「定点観測」。オープンロジの伊藤さんに、物流について聞きました。※本記事は、2022年12月25日刊行の『季刊ECzine vol.23』に掲載したものです。

予約販売でも油断は禁物 こだわりの物流は倉庫と協力を

 今回の特集テーマでもある「ソーシャルコマース」だが、物流の現場にも影響をもたらしている。

「当社のクライアントでも、インフルエンサーの方がSNS上で商品を紹介してECで販売する事業が急成長しています。ソーシャルコマースは、れっきとしたコマースのひとつのカテゴリになっていると感じます。在庫を持たず、予約販売形式で行うため余剰在庫のリスクが軽減できるのが特徴です。効率が良い事業だということで、インフルエンサーを抱える事務所では所属するタレントごとにECを立ち上げるようなところもあります。予約販売形式であれば、物流業務の委託を受ける物流業者側も、入庫や出荷、人員配置など作業のハンドリングがしやすくなっています」

 だが、ソーシャルコマースに取り組む事業者の数が増えてスケジュールが重なるようになれば、物流現場のハンドリングの難易度が上がる。

「一般的に事業者様は、ECのバックヤードについてはそれほど詳しくなく、物流業務に関しては物流業者に丸投げしがちです。注文が増えたら人も場所も自動的に増やしてもらえる、ミスがなくて当たり前といった発想で複雑な業務依頼が増える場合もあります」

 たとえば商品の個数によって化粧箱を変えたい、特定の商品の場合のみ、入庫時の梱包資材と出荷時のそれを変えてほしいといった要望など、流通加工業務依頼はよくあると言う。D2Cはインフルエンサーのこだわりやファンへの気配りが決め手で、差別化のための重要な要素ではある。そういった複雑な業務依頼が増えるのは、物流業者側にも一因があると伊藤さんは指摘する。発注者がECを始めたての頃に、良かれと思って細やかなサービスを請け負ってしまい、インフルエンサー、扱う商材、注文が増えるに従って、業務は指数関数的に増え、現場の人のアサイン、スケジュール管理まで含めると難易度が上がっていく。

「解決策のひとつがシステム化することです。オープンロジでは2022年9月、ユーザーが希望する倉庫内における非標準的な倉庫内での業務依頼をカスタマイズメニューとしてユーザーのシステム画面に追加し、画面上で一元管理・指示が可能となる『入出庫加工指示機能』を開発・提供開始しました」

 この入出庫加工指示機能の利用により、ユーザーはポータルの標準メニューを自社仕様にカスタマイズし、希望する独自の流通加工業務の依頼を標準メニューの作業項目と同じように画面上で一元管理・指示することが可能になる。2022年10月には、越境ECにも対応した。

「物流のシステムによる自動化・効率化、さらにはデータ活用を訴えてきましたが、まだまだ浸透しきれていません。物流業者側も依頼されたことをそのまま請け負う、業務負荷が重いから断るといった受け身でアナログな選択だけでなく、システムによって解決したり提案していく姿勢が重要だと考えます」

 一方でEC事業者側の歩み寄りも重要だ。

「仕事量が増えたらその分支払うから、通常よりも複雑な業務であるなら追加料金はいくらだという考えかたもあり、それはそれで筋が通っています。しかし物流現場では人が動いていますから、パートナーとして付き合えているかどうかで対応は変わってくるものなのです」

 物流業者とパートナーになるために、年に2回は委託先の物流倉庫を訪れ、半日以上かけてオペレーションを確認してほしいと伊藤さんは言う。

「単なる倉庫見学では何も変わりません。入荷、保管、出荷までの実際の流れをチェックし、その作業に対して現状支払っている金額が適切なものなのかを確認しましょう。リードタイムをもっと短くすることはできないかのアイデアが生まれたり、ミスや事故が起きやすい流れになっていないかなども見つけやすくなります。その場で解決できなくとも宿題として持ち帰り、その後の週次、月次のミーティングでEC事業者も物流業者も改善の方向に向かうことが重要です。単なるコストセンターとしての認識だと、ここまでこだわることはできないでしょうから、物流を顧客体験を高める重要な役割だと考えていただきたいのです」

 ソーシャルコマースに分類しきれないが「クラTクリエイト」のサイトで、学校行事などで着用するクラスTシャツを販売する株式会社KOMATOについて、消費者庁は納品遅れが相次いでいるとして社名を公表した。ECは商品が消費者の手元に届かなければビジネスとして成り立たない。ソーシャル上で売れたら終わりでなく、届けるところまでぜひ意識してほしい。

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