今まで以上にShopifyの「本気」を感じた!Shopify Unite in Melbourne 速報レポート
こんにちは、Shopifyエバンジェリストの河野です。みなさん「Shopify Unite」はご存じでしょうか?
Shopify Uniteは年に一度、Shopifyパートナーとデベロッパーが世界中からトロントに集結し、新たなつながりを作り、コマースの未来を一緒に考える世界最大級のEコマースのカンファレンスです。
この度、3年ぶりにリアル会場、かつトロントだけなく、ロンドン、メルボルンでuniteが開催され、その中で最後の会場となったメルボルンに、私、河野も訪問してきましたので、今回は速報レポートを皆様にお届けしたいと思います!
今回のShopify Uniteは今までと少し毛色が変わり、技術カンファレンス的な立ち位置となっています。新しい機能やサービスの発表、というものよりも今年のShopify Editions(注:Shopify Editionsは、「Connect to Consumer - 消費者とつながる」時代のビジネスに全面的に取り組むShopifyが、年に2回、数百件におよぶアップデートを一挙公開するイベント)で発表された機能の活用方法やAPAC全体の現状及び課題の共有、これからの展望についての発表がメインとなっていました。
ただ、すでに発表されている機能であっても、workshop形式でトップクラスのエンジニアが手取り足取り教えてくれるのはとても学びがあります! とくにQ&AはAPACのパートナーたちがガンガン鋭い質問を投げかけてくれるのに対して、Shopify チームが全て真摯に回答してくれていて、そのやりとりの中身自体がコンテンツになりそうな内容の濃さでした。
そんな中で、まずはひと段落というところで、今回皆さんに共有したい内容をいくつか速報でお伝えしますね!
1.Shopify のサービス全体がこの1年で大幅にアップデートしてきたことを改めて咀嚼する内容
すでにEditionsで新機能やサービスの紹介をされていたので、目新しさという点ではそこまで期待していなかったのですが、今回は初めてその全容、全貌が明らかにされ、そこからShopifyの今後のビジョンが強く感じられる内容でした。
Shopifyが目指す世界観はよりSMBからエンタープライズへのシームレスな連結(その逆も然り)です。とくにflowやfunctions、Checkout Extensibilityは作られた仕組みを再活用できる構造が明確に示されており、エンタープライズ用途で開発された内容が時間を経てSMBにも展開できたり、その逆も可能だったりと、今まで大きく壁があった両者をつないでいくエコシステムが明確に組まれていて、それを実現していく意志を感じる内容が多くありました。
エンタープライズ向けに開発されたflowやfunctions、Checkout Ex のアプリなどが洗練されSMB向けのパブリックアプリで展開される未来はShopifyならではです。
SaaSのサービスはビジネスのスケールのためにエンタープライズを狙っていくフェイズが必ず訪れると思うのですが、Shopifyはそのステージに対してもSMBとエンタープライズ両方にメリットがあるShopifyらしい答えを用意しているなと感じました。
2.マーチャント(店舗)さんができることを増やしたい、という強い意志
ShopifyQLやmetafieldの活用などは、マーチャントさんのインハウスでの活用にて効果を発揮することを前提に作られているとワークショップを経て感じました。
日本の場合はテクニカルな領域はどうしても開発会社に頼らざるをえない専門的な領域という認識がありますが、今後はEC自体も開発会社や制作会社は車に例えるとメカニック的な立場になり、車そのものの運転はマーチャント(店舗)が自ら全てハンドリングするという流れがきていることを感じさせます。
ただ日本ではインハウスでの体制づくりはなかなか進まないので、この辺りは今後の世界のトレンドとどう向き合っていくのかは大きな課題だなとも思います。その辺りの橋渡し的な役割を我々パートナーは今後期待されるのかもしれないと感じます。
3.ヘッドレスコマースや、CMSを充実されることによるコンテンツの自由度の拡張など、より既存ECの枠組みを超えるチャレンジに力を入れている
今回、ヘッドレスコマースのフレームワークであるHydrogenやMetafieldを活用したコンテンツモデルなどの解説やワークショップに多くの時間が割かれていたことからも、今後かなりこの領域に力を入れていくことは間違いなさそうです。
逆に言えば我々パートナー側も「E」コマースという存在に縛られない新しいサービスや仕組み、アイデアを求められていくのだろうなと感じます。
POSシステムやカタログ、もしかすると実売データからの需要予測をそれを活用した生産管理のサービスなどもShopify起点で考えることもアリかもしれません。よりコマースの「基幹」としての立ち位置が明確に示されたイベントでもあると感じます。
4.APACのパートナーたちが過去大変な思いをして、実現してきたエンタープライズ対応を、Shopifyとしてより強力かつ効率的、持続的な仕組みを提供することへの強い意志
Shopify自体はSaaSであるものの、APIの充実とそこからもたらされる自由度は高く評価されてきました。しかし一方で、決済画面のカスタマイズ(Checkout.liquid)などはサイロ化、ブラックボックス化しやすく、またベンダーロックインの問題も生み出し、ベンダー側も正直なところ長期的な視点からあまり弄りたくない……という問題をずっと抱えていました。
しかし今回のuniteの発表からは、今後はそのすべての問題を解決する意気込みを感じました。flowやfunctions、Checkout Extensibilityはそれらを体現しており、ここの設計と適切は配置がうまくいけばより多くのエンタープライズ需要を安全にかつスムーズに、そしてサイロ化せず、持続的なアップデートが実現できるのでは?と強く感じました。
そのためにはこれらの仕組みを完全に理解し、作法に則り、適切なUXを組み上げる設計力が必要になることは間違いないため、その辺りのスキル向上は必要不可欠になってきそうだなと。あわせてUI自体もいかに迷わせずに使ってもらえるか(マーチャント向けにもユーザー向けにも)。ここのデザインのスキルもとても重要になってくることも間違いないです。
ここのあたりの設計スキルやアプリのデザインスキルは今後需要は増えていく一方だなと感じます。
5.真の「Shopify」 はこれからだ!
今回のイベントで一番感じたことは、今まで以上にShopifyが「本気」だということ。(今までももちろん本気だったと思いますが笑 最近のShopify は特に気迫を感じます……)。
EC関連のサービスを運用している(していた)立場の経験がある身としては、やはり大幅なサービス刷新は勇気がいるものですし、直接売上に関係ないもの、リスクが高いものは後回しにしがちになる……と感じています。
しかし、ここ1年のShopifyはあえてそこにメスを入れ、大きな改革を推し進めていくことに力を入れてきました。そして今回のUniteではその集大成を自信をもって発表されている。そしてパートナー1社1社と真摯に向き合い(1対1のオフィスアワーもありました!)、Shopifyの NewNormalを共に作り出そうという強い決意を感じる……そんなイベントでした。
ShopifyのNewNormal、まずは我々エバンジェリストがしっかりと理解し、咀嚼してからマーチャント(事業会社)さん、パートナーさんに展開していかなければ!というところですので、皆様引き続きご期待くださいませ!