販路の多様化が事業者の苦境を救う 中国EC市場に着想を得て生まれた「カウシェ」
ECzine読者の皆さん、初めまして。株式会社カウシェの門奈剣平と申します。当連載「中国ECの変遷から見るこれからのコマース」で、中国のトレンドや小売事情をお伝えする前に、まずは私が代表を務めるカウシェをなぜ創業したのか、その背景をお話しさせてください。
2020年4月、新型コロナウィルス感染症の影響により東京都で初の緊急事態宣言が発令されました。私はこのタイミングでカウシェを創業しています。コロナ禍による社会の変化を目の当たりにしながら、当時多くの事業者が先行きに不安を感じ、経済的にも苦しい状況となる方が多かったのではないでしょうか。かくいう私の母も都内で飲食店を経営しており、まさに苦しんだ事業者のひとりでした。
一方で、新型コロナウイルス感染症の流行が日本よりも早く訪れていた隣国の中国を見ると、様子が違っていました。なぜなら、中国にはアリババやタオバオをはじめとする大手ECモールに加え、動画で生配信ができるライブコマース、共同購入の「拼多多(Pinduoduo)」など、実店舗以外にもオンラインを用いたさまざまな販売方法がすでに存在していたからです。そのため、たとえコロナ禍でオフラインの販路が絶たれたとしても、事業者が消費者とつながる方法は多数存在していました。
私は日中ハーフとして中国で生まれ、15歳の時に日本に来ています。こうしたバックグラウンドから中国の情報にふれる機会も多く、世界でもっともEC化が進む中国のアイディアから着想を得て日本で立ち上げたのが、共同購入型のEC、シェア買いアプリ「カウシェ」です。
すでに中国のEC化率は30%超え モバイルが主戦場に
中国のEC市場は年々拡大を続けています。2020年の日本国内のBtoC EC化率が8.08%、世界の平均EC化率が17.8%の中、中国のEC化率は約30%を記録。表にまとめると世界の平均を大幅に超えていることがわかります。2019年比でも大きな成長を遂げており、今後もさらに飛躍すると予想されている状況です。
また、中国国内のインターネット利用者数は10億人を超えています。2016年にパソコンユーザーを逆転し、今やインターネット利用者の約6割がスマートフォンなどの携帯端末を利用している状況です。現在の中国EC市場の主戦場はモバイルであり、キャッシュレス化も進んでいます。
なお、中国の小売業の販売額に目を向けると、上位3位はアリババ傘下の「天猫(Tmall)」「京東(JD.com)」「拼多多」となっており、この3社で上位20社の販売額の7割を占めています。