迫られる小売DX 6つの視点で変革を
2021年12月22日、カインズが東急ハンズを買収、マスメディアでも大きく報じられた。明けて2022年1月31日には、セブン&アイ・ホールディングスが、そごう・西武の売却に向け、入札を実施するとの報道があった。相次ぐ業界大手のM&Aに、小売業が大きく揺れていることがわかる。
コロナ禍や政府によるDX推進と、これまでなかなか進まなかった日本企業のオムニチャネル化も待ったなしの状態になったと言える。2020年3月に「日本オムニチャネル協会」を設立し、約2年間に渡り、理事として推進ボードの役割を担ってきた逸見さんも、参加者の本気が見えてきたと言う。
「さらに欲を言えば、会員の皆さんには、小さなことでもさらに積極的に声をあげていただきたい。推進メンバー、分科会リーダーは実績ある著名人が揃っていますが、彼らの意見を聞く場ではなく、問題をともに共有し、話し合う場として設立した会ですから。初歩的な困りごとでも、ためらう必要はないのです」
協会で重ねてきた議論の集大成として、書籍『小売DX大全』(日経BP)を上梓。逸見さんは編著者として名を連ねている。
「とくに読んでいただきたいのは、第3章の『小売DX実践者たちの議論』です。『商品』『売り場』『販促』『カスタマ ー・サービス』『物流』『管理』の6節に分け、それぞれオムニチャネル時代のあるべき姿を論じています」
それぞれの節から、とくにポイントとなる部分を引用してみる。
オムニチャネル時代の『商品』
小売業においても、メーカー任せのPB(プライベート・ブランド)商品ではなく、常に自ら顧客の声に耳を傾け、自社で仮説を立て、メーカーと一緒に改善し続けなければなりません。そして、良いものを作るだけでなく、その商品の情報に顧客がどこでどうやって触れるのかを考えて、その良さが伝わりやすい商品の名称やパッケージなどの訴求まで変えていく必要があります。これがDX、オムニチャネル時代の『商品』なのです。
オムニチャネル時代の『売り場』
すなわち売り場とは、「情報と商品への接触、そして(最終的な)商品の取得のいずれか、あるいはその組み合わせを提供する場」へと変化し、顧客は以前よりも効率的に売り場を利用したり、ECや実店舗などの豊富な選択肢から最適な売り場を選択して比較したりできるようになりました。
オムニチャネル時代の『販促』
顧客は商品そのものを購入するだけではなく、商品を利用することで生まれる期待や価値を購入しています。売ることを目的化する考え方を改め、顧客目線の「あったらうれしい」の開発や、「買って利用したい仕組みづくり」が必要になっています。