ギフトの課題をネットで解決 ECモール「ギフトネットコム」
福田:ギフトネットコムは、ギフトの課題を解決する、新しいECプラットフォームです。贈り主のAさんが金額を指定すると、「ギフトコード」が発行され、郵送やSNSで贈ることができます。受け取ったBさんはギフトネットコムにアクセスし、ギフトコードを入力し、そこにある商品から好きなものを選ぶことができるという仕組みです。
現在のギフトの贈りかたは、商品券などを贈って受け取り手に好きなものを買ってもらうか、贈り主が贈り物を選ぶかの2つです。ギフト市場の規模が17兆円という調査(矢野経済研究所)もあるのにギフトカードがそれほど浸透していないのは、贈り主が「金額がわかるものはちょっと」という思いがあるからでしょう。一方で、贈り主が選んだ物が受け取り手がもらいたいものとは限らない。よって多くの場合、「欲しくないものを贈られる」という状況になっているわけです。
これらの課題を解決しようとギフトカタログが出てきたのだと思いますが、紙媒体では掲載する商品に限りがある。それがネットだったら、という考えから生まれたのがギフトネットコムです。多くの方のニーズに応えられるよう商品数を増やすため、ECサイトさんに出店のご協力をお願いしています。辻野さんのところの「ALEXCIOUS(アレクシャス)」にもご参加いただけることになりました(ギフトネットコムへの出店はこちら)。
辻野:ALEXCIOUSは、伝統工芸品など日本のすぐれた商品、作り手を紹介するサイトです。新宿の高島屋さんにも出店していますが、昨今、オムニチャネルと言われるように、商品の出口を増やしていかなければいけない。その1つとして、ギフトネットコムへの出店を決めました。
加えて、ギフトネットコムが新しい、ユニークなサービスであることに惹かれました。私は新しいことをやろうとしている人がいると、無条件に応援したくなってしまうものですから。
福田:ギフトネットコムは、大きく分けて2種類のギフトを用意しています。1つは辻野さんのところのALEXCIOUSのような、プレミアムなギフト。せっかくもらうなら、普段自分では買わないような、良いものを選びたいという人にオススメです。
もう1つは、お酒やお米のような日用品です。出産祝いは、おしゃれなものよりとにかくオムツがたくさん欲しい!という声もありますから。これまでギフトとは認識されなかったものも並べることで、「本当に欲しいものを受け取る」ことができるようにしました。
辻野:Amazonや楽天市場のようなモールは、すでに欲しいものが明確になっている人が利用しますよね。それに対してギフトは、多くの場合、予算は決まっているけれど何を贈るかは決まっていないものです。ギフトネットコムでは、何を贈るか決まっていない人に、セレンディピティのようなきっかけを与えることができるのではないでしょうか。
ALEXCIOUSも、最終的には作り手が自由に使えるプラットフォームを目指していて、半モール、半セレクトショップとして運営しています。作り手の方が英語サイト用の翻訳や顧客対応までするのは現状難しいので、当社でページ制作から受注や配送まで裏方の作業を請け負っているのが現状です。
すぐれたものは作れるが販売が下手だというのは、日本の全体の課題ですよね。これからは、世界に向けて、マーケティング、ブランディング、販路を作っていくといった、ビジネスプロデュースに注力していくと日本のモノがもっと世界に出て行くと思います。
福田:ギフトネットコムの出店の仕組みは、非常に簡単にしています。また、初期費用、出店料、月額システム利用料、決済手数料すべて無料で加盟していただけます。
さらに、ギフトネットコムではギフトコードにもサイトにも商品の価格を表示せず、贈り主が指定した価格ごとに商品が切り替わる仕組みで、価格競争が起きません。贈り主、受け取り手だけでなく、出店者にもメリットがあるサービスにしています。EC事業者さんが販路を広げる際の1つにしていただければと思います。
異業種だからこそ見える、贈り手と受け取り手のニーズ
福田:アスカネットは写真の会社と思われているかもしれませんが、1992年から自社サーバーで、BtoBの写真転送サービスをやっているんですよ。ネットビジネスがどこまでを指すのかはわからないけど、ネットを使ったビジネスには早くから着手しています。
ギフトネットコムではじめてEC事業に参入するわけですが、はじめてだからこそ業界の常識に縛られずに、「こうなったらいいな」を実現できるんじゃないかな。贈り主や受け取り手の気持ちがわかるというか。ゴールが明確になっていれば、ネットの技術などの問題はコツコツとクリアしていけますから。
先ほど、贈り主が設定した価格ごとに表示される商品が変わると言いましたが、気に入ったものがない場合は、それよりも下位層にある商品も表示して、いくつかに分割して受け取ることも可能です。
この仕組みは、紙のカタログギフトでは難しいと思います。このアイディアは途中で出てきたために、制作会社さんを悩ませたようですが……。
辻野:技術的実現性はいかようにもなるので、やはりユーザの使いかたを先読みした「アイデア」が重要ですね。
百貨店の売上管理や在庫管理は、いまだに古いシステムのままだったりしますよね。販売傾向や在庫状況がリアルタイムで把握できないような場合もあるのに、そこにあまり危機意識もなかったりする。
でも今、スマホの時代でしょう。大がかりで重たいシステムを使わなくても、バーコードをスマホで読みとるなどで、手元の端末を使って簡単に売上管理や在庫管理ができる。それをクラウド上で管理すればさらに便利になる。そういうアプリを作れば、結構需要があってビジネスになるなと思って調べてみると、ある倉庫会社さんがすでにそのようなアプリを販売していました。
たいていの人は、多少の不便があっても、「仕方ないよね」で我慢したり済ませてしまう。でも、起業家タイプの人は「ワンチャンスあるな」と思う。そこが違いですね。
福田:もちろん、すぐにうまくいくわけではないですけどね。アスカネットも、フォトブックのビジネスが軌道に乗るまでは、かなりの金額を投資して、5年くらいかかりましたから。
ただ、続けるうちに、今回の辻野さんとのように、思わぬ出会いというのはありますよね。そうした出会いから、いろいろと変えていく。ギフトネットコムも、現状で完成形だとは思っていません。世に出して、使っていただいて、変えていく。その繰り返しです。
辻野:インターネットのビジネスは、思いついたらすぐにやってみるというのが時代のスタイルですよね。じっくり時間を掛けて考えたサービスを満を持して出すというより、 生煮えの段階でリリースして、使ってもらうことで気づきが生まれて、サービスに反映する。それを高速で回していくスピードの中から、グロースハック的な奇蹟が生まれたりするのだと思います。
見切りが速いのは重要なことで、私がいたGoogleなどは実に見切りが速い。しかし、一方で、事業は5年、10年続けてなんとかなるというものもある。速いのも素晴らしいことですが、新しい事業を成功させるには、スピードと忍耐力、両方が必要なのではないでしょうか。
日本の「贈り物」を変えるために
福田:SNSで花を贈るという、カジュアルギフトサービスをやっている知人がいるのですが、なかなか浸透せず、苦労しているようです。これまでの習慣を変えるというのは、なかなか難しいことですね。
それでもギフトネットコムでは、ギフトの贈りかた、受け取りかたを変えたい。たとえば、お歳暮も年賀状も贈るのではなくて、年賀状にギフトネットコムのコードも印刷されていて、贈り手は一度で済むし、受け取り手は自分の好きなものが選べる、といったように。
辻野:「ギフトに選ぶモノ」も変えていきたいですよね。日本人はギフトというと、海外のブランドものを選ぶことも多い。 でも、ALEXCIOUSで紹介しているような、伝統工芸品をはじめ日本の品々にだって、ギフトにふさわしい優れたものはたくさんあるんですよ。
さらに、ギフトネットコムによって、これまでギフトと思われていなかったものがギフトになる可能性もある。たとえば、ALEXCIOUSで紹介している、新潟県の諏訪田製作所が作っている爪切りがあります。ネイルサロンで話題になって、クチコミで広がっています。
80歳くらいの職人が、手作業で最後の仕上げするこだわりのものです。歯が丸く作られているので、やすりをかける必要がないんです。一度使ってみると、手放せなくなります。爪切りという実用性の高いものとギフトとは相反するようですが、梱包も凝っているので、そのままギフトにできるんです。
こういうすぐれたものを、海外に知らしめていく必要があると考えています。
福田:海外の話が出ましたが、ギフトネットコムという名称でおわかりのように、大金をはたいて(笑)、「.com」ドメインを取得しました。調べたところ、ギフトネットコムのようなサービスはないようなので、海外展開も見据えてのことです。
辻野:数をとるのがインターネットの本質なのに、IT系のサービスでも日本発のものはドメスティックですよね。ドメインの取りかた1つでもわかるように、世界にスケールするような事業設計を最初からするというのは、日本再生のためにも大事なことです。
世界展開を見据えたギフトネットと連携して、ALEXCIOUSでもさまざまな展開をしていきたいと思います。
福田:ありがとうございます。贈り物をする際、「相手が本当に欲しいものを贈る」が実現できたら、どれほど素晴らしいことか、想像していただきたいと思います。その際、ギフトネットコムが必ずお役に立つでしょう。ギフトネットコムが新しい市場を切り拓き、販売チャネルを皆さんとともに増やしていきたいと考えています。