自社ECが担う3つの役割 BtoCのほかにBtoBの需要も
――モールも含めた多店舗展開が当たり前となる中で、自社ECが担う役割をお教えください。
自社ECの役割は、大きく分けて3つあります。ひとつめは、モールでの販売が難しい商品を扱うということです。前回の記事では、ジャンルや価格帯など「商品の特性によって売るべき場所が変わる」というお話をしました。書籍ならAmazon、食品なら楽天市場、と相性の良いプラットフォームが存在するように、自社EC展開にも向き不向きがあります。自社ECは、モールにないサービスを提供できるため、付加価値を与えることで魅力を発揮する商品に向いていると言えるでしょう。たとえば、ブランド価値や専門性の高い情報提供が重要となる高価格帯の商品などが、この条件に当てはまります。
ふたつめの役割は、顧客接点を創出することです。モールの場合、モール側が顧客情報を管理しているため、顧客との接点はモール内でしか持つことができません。一方で自社ECは、取得した顧客情報をもとにマーケティングをするなど、顧客に対するアプローチを行いやすいというメリットがあります。商品やブランドの思いをより深く顧客に伝えることができるため、長期的な関係構築が可能となります。
3つめは、主にメーカーの自社ECにおける役割ですが、BtoBの需要に応えるというものです。たとえば「社員へ備品として支給するため、またはイベントで使用するなどの理由で商品を大量発注したい」と企業が考えた際に、商品をAmazonや楽天市場で探すケースは稀でしょう。多くの企業は、メーカーへ大量発注の問い合わせを行うはずです。自社ECは「公式サイト」、つまり直販で安心して取引ができるサイトとして、さまざまな問い合わせを受け付けるポテンシャルが存在します。問い合わせを受け、隠れた需要に応える中で自社に対する新たな需要を把握することも可能です。モール展開だけでは見えないものを見える化する3つめの役割は、たいへん重要と言えます。