国宝誕生120周年を記念した「国宝応援プロジェクト」から生まれた「カップヌードル専用縄文DOKI★DOKIクッカー」。カップ焼そばの湯切りとダムの放流をかけ合わせた「日清焼そばU.F.O. ダム湯切りプレート」。ファイナルファンタジー誕生30周年を記念したコラボ企画。
はたから見るとまるで売上を度外視していると思えるような、ユニークな企画を次々に仕掛ける日清食品。いかにしてECで売上をあげるかを主目的にする企業やブランドが多い中、なぜここまで振り切った企画を生み出すことができるのか。そもそも日清食品におけるECの立ち位置とは。その根底にある、脈々と受け継がれてきたマインドとはいったい。日清食品のECサイトを統括する佐藤真有美さんに話を聞いた。
1食から購入可能、翌日配送も 日清食品が大幅なサイトリニューアル
佐藤さんが日清食品グループに入社したのは2014年。最初の1年は、日清食品ホールディングスで米国法人におけるEC向けの商品開発を担当していた。日本の日清食品がECサイトを大きくリニューアルするタイミングで、現在のマーケティング部に異動。以降、2016年9月に行ったサイトリニューアルの指揮を執った。日清食品では、2000年の4月からECサイトは運営しているが、事業として本腰を入れているわけではなかった。
「ケース単位のみで販売し、お届けまでにも1週間近くかかっていました。すべての商品がお店に並ぶわけではないので、欲しい商品はあるけれど買うことができない方にお届けする手段、という位置づけだったんです。ですが、社会環境の変化も含めて考えると、ECの強化は避けて通ることはできません。そこで、即席麺を買うんだったらいちばん買いやすい場所にしようと大幅なリニューアルに踏み切りました。その際に心がけたのは、できそうなことを積み上げるという考えかたをやめること。リニューアルにかかるコストを考えることも重要ですが、せっかくやるからにはお客様にいちばん望まれる形にしたい。そこに近づけるためには、私たちができることをただ積み上げているだけでは足りないと思い、できることは何かではなく、ベストだと思うことをやるためにはどうしたらいいのかを考えていきました。それに、お客様の期待を上回ることができなければ印象にも残らない。ですから、ちょっとやりすぎかなというくらい、サービスレベルを高めていったんです」
「別の会社から転職してきたからこそ、短期的な売上はもとより、お客様と長く関係を築くことを最優先する風土に、より感銘を受けたのだと思います」と佐藤さん。日清食品の企業風土を表すならば、「損して得取れ」という言葉が当てはまるという。
「小売店さんでお買い求めいただいているお客様とも先の長いお付き合いを常に考えていますし、お客様から寄せられるメールは経営陣がすべて目を通していて、ひとりのお客様から寄せられた声で会社の方針がガラッと変わることもあります。ECサイトでいろいろな商品を企画する際にも、これは売れると思って値段を高くすると、『お客様にとって負担が大きいから、企業努力でもう少し安くならない?』とトップから言われることもあるくらいです」