韓国のEC事情から日本の行く末を予想 サービスクオリティー向上が鍵に
2014年に韓国で創業、2017年に接客チャットツール「チャネルトーク」を日本と韓国同時にリリース。コロナ禍によるデジタル接客の需要拡大とともに2021年6月に導入実績5万社を突破し、飛躍的な成長を遂げているのがChannel Corporationだ。
同社は、「SMB(Small and Medium Business)ビジネスの持続的な成長をサポートしたい」という想いでこれまでさまざまなツールを開発。4度めのチャレンジでたどり着いたのが、「顧客の声を聞くこと」と「社内での情報共有を円滑にすること」であったと言う。接客文脈でのチャット活用が進む以前から日本でサービス提供を行う背景にあった韓国のEC事情や、日本のデジタル接客の現在地、チャット接客の使いかたを紐解いていく。
――チャネルトークが生まれた背景は、韓国のEC事情にも起因するかと思います。日本よりEC化が進む国の一例としてこれまでの流れと、それらを踏まえてJayさん・Ayaさんが考える日本のECの未来予想図を教えてください。
Jay 韓国でECが広がり始めたのは、2000年代初頭です。広がった理由はさまざまありますが、私は主に1990年代後半に訪れた経済危機により、リストラされたり就職できなかったりした人々が「資本が少なくとも起業できる」と、IT企業を設立する流れが加速したからだと考えています。
このタイミングで、ECモールの「Gmarket」やオークションサイト「Auction」が生まれました。日本の楽天市場やYahoo!ショッピングのほうが誕生は早かったものの、韓国では競合が次々と誕生し、生き残りをかけた激しい競争が繰り広げられていました。このときに各社がアピールしていたポイントは、「オフラインで購入するよりも安い」という価格訴求です。「安く買えるのならば」と利用者が増え、韓国のEC化率は急速に上昇します。
「ECで買う人が増えているなら、私たちも売ってみよう」とモール出店者が増えましたが、ここでふたつの問題が生まれます。ひとつは、売るためにひたすら価格を下げなくてはならないこと、もうひとつは出店者が増えすぎて売れる事業者が限られてしまうということです。すると、「モール内で集客するよりも、データも取得できる自社ECを作ったほうが良いのでは?」という流れが生まれました。これが2000年代の中ごろのことです。
そしてアパレルなどブランディングに特化したい事業者を中心に、コミュニティーや個人ブログ内で自社ECを宣伝してもらうマーケティング手法が流行り始めました。このタイミングで「STYLENANDA」など新興のヒットブランドも生まれ、2010年初頭には自社ECが乱立します。韓国は東大門など大規模な問屋街があるため、仕入れが容易く在庫なしで起業ができます。ECがキュレーションメディアのような役割を果たし、SNSの興隆とともにインフルエンサーマーケティングも加速、同時に顧客の目利き力も上がっていきました。売るための投稿が刺さらなくなった今は、「ZIGZAG」や「ABLY」など自分に合ったブランドを提案してくれるプラットフォームが流行っています。
すると、選ばれるには「迅速に配達する」「丁寧なカスタマーサービス」といったように、他社よりも特化したサービスを提供しなくてはなりません。チャネルトークはその点に着目し、独自性があるサービス提供を手助けするためにチャット接客ツールを提供しています。こうした流れを踏まえると、今の日本はインフルエンサーマーケティングが流行り、顧客の目利き力が上がり始めた約2~3年前の韓国と同じ段階と言えるでしょう。そのため、当社は「商品だけでなく、サポートや接客まで含めたサービスクオリティーを高めた事業者が生き残りますよ」と事業者の方々にお伝えしています。
Aya 韓国の顧客は、もはやインフルエンサーも「セラー」ととらえています。日本でも同様の流れが進むのではないかと考えています。
Jay 日本でもコロナ禍を機にEC進出する事業者が増加し、ものを売るためにインフルエンサーの力を借りる機会が増えています。マーケットは競合が増えることで変化しますが、変化のスピードもコロナ禍で加速している状況です。コロナ禍以前は韓国と5年ほど差が開いていた日本のEC市場も、この1年で2~3年分縮まったように感じています。