矢野経済研究所は、国内ギフト市場の調査を実施。オケージョン別の動向、チャネル別の動向、アイテム別の動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。
市場概況
2022年の国内ギフト市場規模は小売金額ベースで、前年比104.1%の10兆5,360億円、2023年は同102.7%の10兆8,190億円を見込む。
儀礼的な要素の強いフォーマルギフトは、ライフスタイルや人付き合いに対する志向の変化など、時代の流れとともに縮小傾向にあるものの、ギフトを贈るというコミュニケーション手段は現代社会に即したかたちで受け継がれており、よりパーソナルな、そしてより親密な間柄において重要度を増している。
コロナ禍では、人々が集う機会に生じるギフト需要が低迷し同市場は大きな打撃を受けた。しかし、帰省などができず家族や友人と直接会えない代わりに、感謝などの気持ちを伝えるギフトの需要が活性化。コロナ禍以降もその傾向は継続しており、改めてコミュニケーション手段としてのギフトの存在価値が高まっているといえる。
注目トピック
時代やコロナで消費行動に変化、イミ消費ギフトが市場拡大のきっかけとなるか
時代の移り変わりやコロナ禍によって、世の中や人々の価値観や消費行動は変化している。ギフト市場において2023年に顕著な傾向を示したのは、コト消費に代表される「体験ギフト」のV字回復である。
コト消費は「実際に足を運んで体験する消費」を指す。行動制限が撤廃されて以降、観光地やイベント会場、宿泊施設やレストランに多くの人々が訪れており、コロナ禍で自粛せざるを得なかった外出先での「体験」を求めている。「体験」を通じて従来味わえなかった満足感を提供する「体験ギフト」の存在価値は、ますます高まっていくものと考えられる。
近年は、コト消費がさらに進化したトキ消費やイミ消費が注目を集めている。トキ消費は1回きりのイベントなど「そのとき・その場でしか味わえない盛り上がりを楽しむ消費」を指すため、コト消費の延長線上にあるとも言えるが、イミ消費は「ある商品を消費/利用することで生まれる、社会貢献的側面を重視する消費」である。
ギフトにおけるイミ消費は、「環境保全」、「地域貢献」、「正義」、「歴史・文化伝承」、「健康維持」などを重視し、自らの社会正義や消費観に沿ったギフト選びが該当する。伝統技法で作られたギフトを選ぶことで職人や産地の存続につながったり、配送の工夫をしている店舗でのギフト選びによりCO2削減に貢献できたりと、贈り主や贈り先の価値観に寄り添うイミ消費が、主に若年層を中心に見られ始めている。
こうした、オケージョンでも価格でもなく「価値観」によるギフト選びは、さまざまな切り口の登場によって今後ますます増えていく可能性を秘めている。
将来展望
2024年の国内ギフト市場規模は前年比101.7%の11兆20億円で推移すると予測する。
コロナ禍では、対面での食事などのコトを通じたお祝いの機会を作れない代わりにモノが贈られていたが、人と会えるようになったことで再びコト消費へと戻りつつある。
一方で、ギフトを贈ることで得られる経験は贈り主と贈り先双方にとって有意義なものであり、カジュアルギフトでは2023年の単年の成長率が前年割れするものと見込まれるものの、コロナ前の2019年と比較すると2桁成長を遂げると見込まれるオケージョンは多い。
また、人と直接会う機会にともなって発生する手土産やお土産などは2023年に大幅に成長する見込みで、まだコロナ前の水準までの回復とは言えないものの、今後のプラス成長を期待する結果になっているという。