解釈の幅が広がるD2C 本質は顧客と向き合うこと
今回の特集テーマ「D2C」を絡め、「まずはD2Cの意味を改めて皆さんに考え直してほしい」と問題提起する河野さん。バズワードのように言葉がひとり歩きする中でさまざまな解釈・議論が繰り広げられ、「新たな意味や文脈が生まれるのは当然のこと」とした上でこのように続けた。
「近年、定期通販や単品通販、メーカー直販をD2Cと示すきらいもありますが、これらを『間違いである』とは考えていません。しかし、解釈の幅が広がっても『顧客と継続的にダイレクトにコミュニケーションする』というD2Cの本質から逸れずにいる企業・ブランドにこそD2Cを名乗ってほしいと思っています」
河野さんはBonobosなどアメリカ式D2Cの仕組みを汲みながらも、「インターネットがなければ届けることが難しい人・ものの魅力を伝えられるのがD2Cの素晴らしさ」と語る。
「たとえば、東北の鉄器職人が誇りを持って作った商品を自社ECで世界中の人々に届け、ビジネスを成立させることができる。鉄器という商品を軸に1人ひとりの『好き』が集まって大きな幸せになり、ビジネスがスケールしていく。デジタルを使うことで、今までより多くの人に愚直なこだわりを伝えることができる。D2Cの真の魅力はここにあると考えています。どんなチャネルを使い、どんな売りかたをするかよりも、想いやこだわりといった核がきちんとしているかが大切です」
D2CにおけるECシステム選びは、こうした核となる情報を顧客に向けてどのように伝えるかが最大のポイントとなる。先行してD2Cが浸透するアメリカで成功例が多数存在するため、「D2CをやるならShopify」と考える人もいるかもしれないが、「自社にとってのD2Cが何を示すかによって、適したECシステムも変わってくる」と河野さんは言う。
「ECシステムは、ビジネスの相棒です。しっかりと企業・ブランドに対する理解を深め、表現したい内容を研ぎ澄ませた上でミスのない選択をしなくてはなりません」