「手軽さ」と「情報量」を両立してストーリーを発信する
時代の流れとともにオムニチャネル、OMOが進み、実店舗とECの境目がなくなりつつある昨今。企業・ブランドはチャネルを区別することなく顧客と対峙し、ものを売る工夫をし続けることが求められている。
そんな中で訪れたコロナ禍により加速したのが、実店舗スタッフ活用の動きだ。2020年4月から5月の緊急事態宣言発令時には多くの実店舗が休業を余儀なくされたが、ECやSNS上でのコーディネート投稿やInstagramのライブ配信機能などを活用して情報発信を行い、顧客とつながり続けた企業・ブランドも多数存在する。
こうした各企業・ブランドのチャレンジを見て、既存プラットフォームやツール以上に「ストーリー」を伝える点に重きを置いたサービスを提供したいと考え、新たなツールの開発を決めたのがファナティックだ。同社は自動接客ツール「WazzUp!」の提供を通じて、日頃からアパレルなどさまざまな企業・ブランドの悩みを聞いている。近年、とくに動画を用いた訴求の重要度が上がる中で、企業・ブランドの担当者からはこのような声を聞いていたと言う。
「動画を作るのは手間がかかるため、手数を増やすことは難しい。ライブ配信は、編集作業が必要ない一方で事前準備に同程度の時間を要するため、こちらも手数を増やすことは難しい。またリアルタイム視聴者数が限られるため訴求力に欠ける上、より多くの顧客に見てもらおうと考えると、どうしても実店舗スタッフに時間外労働を強いることになってしまいます。こうした悩みをお聞きする中で、より手軽に動画がアップできるものを作れば良いのではないかと考えました。さまざまな方向性を模索した結果、たどり着いたのが『ストーリー』という切り口です」
アパレル企業で働いた経験を持ち、ファッション好きでもある野田さんは初回の緊急事態宣言以降、ツール開発を念頭に置きつつ企業・ブランドのECやコンテンツを目にする中で「手軽さと情報量は相反するものであると感じた」と続ける。
「たとえばバナーを使った視覚訴求は、もちろんコストがゼロというわけではありませんが、比較的手軽に迅速に行うことが可能です。しかし、バナーそのものはアイキャッチの役割を果たしても、顧客視点で考えた際に情報量が不足しています。情報量の多さは動画のほうが圧倒的に勝っていますが、前述したように手軽とは言えません。既存の手段はほぼ『手軽さ』と『情報量』がどちらかに偏っており、どちらも程良く間を取ったサービス・ツールは存在していないことがわかりました。ないのであれば、僕らが作ろう。そう考え、『ザッピング』が生まれたのです」