物流面で改善できる顧客体験 外注時は情報共有を欠かさずに
今号の特集テーマ「顧客体験(CX)」と絡め、伊藤さんは物流領域における体験設計の重要性を説く。商品を作り、届ける企業・ブランドからすれば後工程となる物流も、顧客にとっては商品の実物と触れる最初の接点となる。ここに至るまでの過程でどのような体験を提供できるか、そして顧客がそれらに対しどのような価値を感じるか、データを見ながらさらに向上させるための設計が鍵となる。
「顧客体験を向上させるには、生の声にも真摯に耳を傾ける必要があります。あってはなりませんが、誤配送が起きた、梱包が丁寧でなかった、商品が届くのが遅いといったクレームが生じた場合は、根本の原因を見つめ、今後のリスク回避につなげましょう」
誤配送の場合は、注文時の検品フローを再確認し、人力で対応している部分を見直す。物量に応じてWMSなどのシステムを導入したり、システムを利用する企業へアウトソースしたりするのも良いだろう。バーコードを活用した検品作業を行っていない場合は、商品1つひとつにハウスコードをつけるといった対応も必要となる。
梱包については、自社の顧客特性をとらえたケアが求められる。熱狂的なファンを抱えるD2Cブランドなどは、梱包から世界観を醸成することが欠かせない。伊藤さんは「外注している場合は自社の顧客についても共有し、応対のレベルを統一することをお勧めしたい」と語る。
商品の届くスピードに関しては、注文から出荷までのリードタイムの短縮が必要となる。配送会社に荷物を引き渡した後、3日以内にはほぼ全土へ荷物を届けることができる日本の環境下においては、自社の出荷梱包にかかる時間をコントロールせずにこの課題を解決することは困難だ。EC立ち上げ当初は、自社で対応していたとしても、「オンラインでの購買が増える中で物量を捌ききれず、迅速な出荷へのボトルネックになってしまっているのであれば、外注を検討すべき」と伊藤さんは提言する。
「外注する場合も、倉庫会社と連携し、入庫量や見込み注文量を共有することが欠かせません。倉庫会社は、1~2週間単位でシフトを組むため、2週間前には情報共有できると良いでしょう。その後も日が迫り、情報がアップデートされるたびに適宜共有することをお勧めします。物量に合わせて人員増員ができれば、配送遅延のリスクを軽減できます」