コロナ禍でビジネスモデルに変革 デジタル接客の問い合わせ相次ぐ
――緊急事態宣言が発令された4月7日に、AIチャットボット「WhatYa free」の無償提供を発表され、迅速なご対応でした。御社へのお問い合わせや既存ユーザー企業の状況から読み解ける動向について教えてください。
無償提供を発表した「WhatYa free」はもちろん、有人接客ツール「OK SKY」についても多数のお問い合わせをいただいており、ビフォアコロナ(2020年2月と3月の比較)の2.7倍、ツールの導入は5倍にも伸びています。以前から導入を検討いただいていた企業様が、当初の導入スケジュールを短縮されたことが大きな要因です。また巣ごもり消費の影響で、既存ユーザー企業様のECサイトにおけるチャット利用は平均2.7倍に、あるインテリア企業様では4倍というデータも出ています。既存ユーザー企業様のECサイト売上は、平均して前年同月比の1.5倍となっています。
ご存じのとおり、日本のEC化率は6.22%(BtoC-EC、経済産業省 2019年5月発表)でひと桁台と、海外と比較しても低く、購買行動のほとんどがリアルで行われています。一方で、当社のサービスをご利用いただいているナノ・ユニバース様のように、一貫してECサイトの役割を重要視し、注力して来られた企業様のEC化率は40%を超えています。企業によってECへの注力度合いにバラつきがあるというのがビフォアコロナの状況でした。
しかしながら実店舗が休業に入ってしまったことで、実店舗のみに大きく依存した販売チャネルを組むことは大きなリスクであると再認識された方が多かったのではないかと思います。だからこそ、ここからECをチャネルとして強くしていくために、すでに注力されていた企業様はさらに投資を進め、既存流通との兼ね合い等から注力が難しかったメーカー様もD2Cを強く意識され、ECを始めるスケジュールを半年以上前倒しするなど行動に変化が現れています。
ECの強化、D2Cという流れから、チャットを中心としたデジタル接客についての注目度合いが高まっています。通常、たとえばアパレルであれば、商品の組み合わせかたやトレンドなど、商品そのもの以外の情報については、リアルな人対人で行われる口頭ベースのコミュニケーションで補われ、購入に結びついていました。そこには人間関係があり、実際に商品に触れて確かめるという行為はもちろんのこと、「あなただから買う」という人軸での消費が実店舗では起きていました。
それがデジタルにおいては、商品情報、クチコミ、メディアから発信される情報など、人が処理できる量を超えた圧倒的な情報に触れながら、購入の意思決定をしなくてはならなくなっています。情報が多いことはデジタルのメリットでもありましたが、あまりに多くなり処理できないというデメリットも大きくなっています。その結果、一般的に実店舗では来店者の購入率が5~7%あるところ、ECでは0.5~1%程度という事態に陥っています。その差が「接客」にあるだろうと考え、デジタル上でも接客をしていきたい、その手段としてチャットをツールとして選ぶという流れが起きています。
――ビフォアコロナでは、チャットなどのデジタル接客はあくまで先進企業のものというイメージでした。コロナ禍で裾野が広がっているのでしょうか。
意思決定が早い・遅いの違いではなく、ビジネスモデルが大きな要因でした。ECの売上高が全体の2~3%しかない状況下では、EC上でのお客様との接点もなかなか生まれません。ならば、ECよりも実店舗に投資するという判断になるでしょう。それが実店舗の休業により、そのビジネスモデルにも変化が迫られました。
たとえばアパレルにおいては、緊急事態宣言が解除されれば実店舗も営業を再開しますが、客足が従来どおりまで戻るには少なくとも半年~1年はかかるだろうというのが、当社のクライアントやお問い合わせをいただく企業様のお見立てです。いかにこれまでの売上を維持していくかの視点から、デジタル接客を行い、ECサイトの売上をしっかり上げていきたいとお考えなのでしょう。
もうひとつは雇用確保です。販売員の方が実店舗のみでしかお仕事ができない状態では、実店舗が休業になれば、店舗閉鎖や雇用調整という選択も採らざるを得ないと思います。そうならないよう、活躍できる範囲を実店舗からデジタルまで広げていきたいというお考えがあるのでしょう。当社ではビフォアコロナから有人でのデジタル接客を在宅で行う「在宅WEB接客」ニーズの高まりを受けて、さまざまなサポートを提供しています。もともとは働きかたの多様化や女性のライフイベントの変化に適した新しい働きかたとして開始しました。売上と雇用の両面から、アフターコロナは意思決定を早め、デジタル接客を取り入れようとする企業様が増えていると捉えています。