らくらく連絡網のイオレ、運用型広告事業へシフトの理由
17年12月に上場したイオレ(2334)は、「らくらく連絡網」という無料のグループコミュニケーション支援サービスを提供していることで知られる。
団体やグループ活動に欠かせない出欠確認や日程調整、重要情報の伝達、安否確認などをメールの一斉送信で簡単にできることが、利用につながっているようだ。試合の写真、会議資料、集合場所の地図などを共用する機能も備わっていて「便利」という声も多い。
18年6月末現在、サークル、ゼミ、スポーツ系・趣味系コミュニティ、PTAなど、会員数が3名以上所属している団体数は38.2万、会員総数は673万人である。イオレによれば、大学生(院生を含む)4人に1人は利用者だという。
運用開始は2005年。14年にはスマホ版アプリもリリース。広告が非表示になる有料版もあるが、基本は無料でのサービス提供であり、ネット媒体として広告収入で運営するというのがビジネスモデルだ。サイト内のバナー広告による収入を中心に、タイアップ広告の配信など広告主のマーケティング支援を実施し、成果に応じた収入も得る。
「ガクバアルバイト」「らくらくアルバイト」「pinpoint」といった事業も手がけている。 ガクバアルバイトは大学生に特化したアルバイト求人情報提供サイトで、求人情報掲載企業からの広告収入が収益モデルである。
らくらくアルバイトは、アルバイト求人情報ポータルサイトだ。「an」や「マイナビ」など連携している求人メディアの情報も掲載。サイト利用者が応募した場合、アルバイト求人情報を提供している提携企業側から広告収入を受け取るというもので、送客成果報酬型ビジネスだ。
pinpointは、まさにピンポイントの広告掲載・運用サービスである。たとえば、広告主の要望が「来春卒業で、関東在住の理系の大学生に採用情報の広告を配信したい」ということであれば、ターゲットを絞り込んでLINEやFacebook、Twitterなど外部メディアに広告を配信する。広告の費用対効果を高めたいという広告主のためのサービスの提供である。
外部メディアの広告枠の買付・販売を手がけるという点でいえば、ネット広告代理店型ビジネスといってもいいだろう。売上原価に計上している「仕入高」は、16年度3億1,937万円(売上高に占める割合27.6%) 17年度5億2,962万円(同34.2%)である。
イオレ売上高内訳
イオレは成長戦略として「運用型広告の販売と運用に注力」すると、pinpoint事業を中核に据える姿勢を鮮明化。自社メディア(らくらく連絡網、ガクバアルバイト、らくらくアルバイト)における広告収入依存から脱却し、他社メディア利用の運用型広告サービス事業にシフトするという。
事実、ビジネスモデルの転換にともない、18年4-6月からは売上高の内訳を一部変更。従来の「pinpoint」に「その他」の一部を加え「pinpoint及びその他運用広告型」にしており、3か月の数値ながら全体売上高の55.7%を占めたように中核事業に育成しつつあるといっていいだろう。前年の同期間(17年4-6月)と比べると、全体売上高に占める割合は19.3ポイントアップ。反対に自社メディアの売上高比率は42.8%から28.8%へのダウンである。
イオレが運用型広告事業へシフトしているのはなぜか。