送料値上げは、オークション制の意味
勝ち組は「配送にやさしいEC事業者」
2018年最初の定点観測で、栗田さんは年末商戦を振り返り、「ルールチェンジが明確になった」と評した。
「なぜ送料が上がったのか、本当のところは誰もわかっていなかったのだと思います。私も最近ようやく理解したのですが、市場のルールチェンジが行われたのだと考えています。これまで配送業者は、無限の人員とトラックがあるという前提でサービスを提供していました。しかし、昨今の人口問題などにより、実は人員とトラックが有限だと言うことに気がつきました。リソースが無限にある場合は、数多く利用する人が得をする、つまり大量に出荷するEC事業者ほど送料が安くなったのですが、リソースが有限になったためにオークション制に変わったのです。つまり、高い送料を払えるEC事業者しか、相手にしてもらえなくなるわけです。それを顕著に表している例として、年末商戦の忙しい時期に、12月20日までしか集荷に来てくれなかったという店舗さんの話も聞いています」
こうした状況を受けて、これまで倉庫任せだった物流について、EC事業者も真剣に取り組まざるを得なくなったと栗田さんは言う。実際、物流をテーマにしたセミナーは大人気で、当初の予定よりも増席するものも。栗田さんへの相談も増える一方だそうだが、コンサルティングで話を聞いていくと、栗田さんがもっとも基本的で重要なポイントとしている「荷物ひとつを運ぶコストがいくらか」「(物流に関する)外部に委託する仕事、自社でやるべき仕事の切り分け」が理解できていないEC事業者がまだまだ多いとのこと。
「あいまいな定義で『物流』とひと括りにしている仕事は、自分たちEC事業者の仕事ではなく、3PLや倉庫がやる仕事だという認識だからだと思います」
基本的なポイントがまだクリアできていないEC事業者が多いという前提で、これから物流問題に取り組む際のポイントを聞いた。
「まず、物流は全体のクオリティを問う方向に向かっているので、倉庫で行っている物流業務を効率化する、コストを削減するという発想が時代遅れです。そして、基本ができていない以上、倉庫業務の改善を考える前にやるべきことがある。それができたら、『再配達』に代表される物流工程でのムダを省くためにEC事業者側でできることを考える。そこに気づいて取り組んでいるEC事業者が、結果的に勝ち組になっていると感じています」
物流工程でのムダを省くとは。具体的な事例として、栗田さんは自身の体験を語ってくれた。ネットショッピングをした際に、宅配ボックスがあるにもかかわらず配送業者が持ち帰り、購入先に問い合わせると「誤配送等のトラブルを防ぐため宅配ボックスは不可、手渡しのみにしている」との回答だったそうだ。
「誤配送を防ぎたいなら、一定期間経ったら再度住所を確認したり、受注管理系のシステムを入れるなど、いくらでも手段はあります。自分たちが面倒でやりたくない仕事によって生まれるムダを、配送業者に押し付けていることがよくわかる例です。しかし先述のとおり、配送はオークション制になりました。『配送業者に優しいEC事業者』にならない限り、送料値上げやセール時期の集荷拒否など、厳しい条件を突きつけられることになる日は近いと思います」