春節、物販よりサービス業が積極的
使ってもらい、持ち帰ってもらう工夫を
今回の取材は、2018年の春節(2月16日)の前に行った。春節は旧暦の正月にあたり、アジア各国、とくに中国では盛大に祝う風習がある。日本では年末年始の休暇のようなもので、1週間ほど休暇をとり、旅行に出かける中国人も少なくない。いわゆる“爆買い”という言葉は、ブームが去った感があるが、1月17日の大阪観光局による発表では、2017年の来阪外客数が1,111万人と初の1,000万人を突破。うち、中国からの来阪客が占めるのが約400万人と約4割である。日本は相変わらず、人気の高い観光地のひとつだ。
「最近は、クルージングツアー、つまり船に乗って大勢でやってきます。“爆買い”の対象となるのはお土産のためのお菓子で、北海道のお土産やキットカットのような安価で手軽に配れるものが人気です。化粧品も相変わらず強いのですが、ラオックスのような免税店で買うのは、まだ不慣れな観光客。日本に来るのが二度目、三度目となるリピート訪日客は、自分で調べて、ドン・キホーテやマツモトキヨシなどで賢く買い物をしています」
お土産やリピートするコスメなど、すでに買うものが決まっている訪日客に対し、買い物代行サービスを行うような人たちも出てきているそうだ。
「リピート訪日客は、東京は何度か経験しているので、大阪、京都、福岡、四国といった観光地や温泉に行くようです。モノからコトへシフトしています。ショッピングは、日本に来て目についたおもしろいもの、自分のためのちょっとしたものを買って楽しんでいるとか」
“爆買い”時代の越境ECの方法として、実店舗でのショッピングの際に、チラシやQRコードなどを持ち帰ってもらい、ECでリピートしてもらおうと考えた企業も少なくなかった。しかし、いまや中国人が欲しがるもの(すでに認知されている商品)で、アリババのCtoCモール「タオバオ」にないものはないと白川さんは言う。
「中国の人は、本当に価格にシビアでよく調べています。タオバオや越境ECサイトよりもオトクな価格で販売できれば利用してもらえるかもしれませんが、ほとんど変わらない価格で購入できるので、難しいですよね。また、日本からの直送ECは送料もかかってくるので、それが気にならない高単価なもの、またはまとめ買いやほかの商品との併せ買いをしてもらう工夫が必要です」
春節をはじめとするインバウンド観光客を獲得するための仕込みは、EC事業者を含む物販を行う事業者はそれほど盛り上がっておらず、ホテルや観光地などのサービス業のほうが熱心だと言う。
「宿泊施設が、プラスアルファでお金を落としてもらうために、ホテルのシェフが作る限定スイーツや、体験型イベントを旅行会社とタッグを組んで提供したりしているようです。物販を行う企業は、ホテルのアメニティに組み込んでもらうこと。価格にシビアな中国の人たちは、タダでもらえるものをとても喜びます。彼らに体験してもらい、余った分を中国に持って帰ってもらう。いま、中国で人気のある商品は、そこから火がついたものも少なくありません」
日本でもライブコマースが注目されているが、本家は中国とも。KOLと呼ばれる中国のインフルエンサーの影響力は絶大だと聞くが。「影響力のあるインフルエンサーを活用するには、マスメディアに出稿するくらいの広告宣伝費がかかると言われています。利用できるのは、大企業に限定されてしまうのではないでしょうか。地に足をつけて、前述のような使って、持ち帰ってもらうための工夫や、機内誌に掲載してもらうなどの努力のほうが効果的だと思います」