急成長する中国のEC市場からヒントを得る
続いて蘇氏は、日中のEC市場を比較しながら、今後の日本EC市場の展望について解説した。世界のEC市場規模と成長率を見てみると、1位の中国が飛び抜けており、市場規模は2位のアメリカの2倍、成長率は3倍ほどもある。
次に日本と中国の市場規模とEC化率を比較したグラフを提示。これを見ると、2012年頃の中国の状況と、現在の日本のEC環境が比較的相似していることがわかる。
続いて、日本と中国の商品カテゴリー別の売上を比較。中国では1位の服・靴・バッグ、2位のデジタル製品・家電、3位のインテリア・家具で、全体の8割を占めているという。
越境EC市場になると、1位が美容関係、2位がマタニティ・ベビー、3位が服・靴・バッグ、4位が食品・健康、5位がデジタル製品・家電となる。このうち日本メーカーの商品だけにしぼると、1位の美容関連が5割以上、2位はマタニティ・ベビー、3位が食品・健康となっており、品質を求めて日本製品を購入していることがわかる。
「中国人が日本に旅行に来て商品を買う場合と、ほぼ同じ傾向が見られます。大きな家電は越境ECではあまり買われていませんが、それ以外の商品は旅行中と同じような商品を買う傾向があるようです」
次に日本EC市場のカテゴリー別シェアを見てみると、1位がデジタル製品・家電、2位が服・靴・バッグ、3位が食品・健康。1位、2位のカテゴリーと全体に占める比率は、中国とほぼ同じになっている。
以上のデータを踏まえて、蘇氏は次のようにまとめた。
「日中を比較すると、現在の日本EC市場の状況が、中国の2012年の状況と比較的相似していることがわかります。2021年には、日本EC市場規模は25兆円、EC化率は10%を超えると予想されており、中国で2012年から現在までにどんなことが起きているかを見ていくことで、市場変化のヒントを得られるのではないか、という結論になります」
中国におけるEC販売データの活用と実績
中国では、EC化率が5%を超えた2012年と、10%を超えた2015年のタイミングで、同社のEC販売データを活用する企業が大幅に増えたという。EC販売データを活用した企業の売上成長率と、天猫全体の売上成長率を比較すると、天猫の平均に比べて倍の成長率となっており、競合・マーケットに比べて圧倒的に業績を伸ばしていることがわかる。
「EC化率5%を超えたタイミングで多くの企業様がデータ活用に興味を持ち、実際に結果を出しているということです。日本のEC化率は平均では5%ですが、一部のカテゴリーではおそらく10%や15%になっているでしょう。このタイミングでEC販売データを利用していかないと、今後の戦略を決めにくくなります」